脳が「地磁気感覚」活用 盲目ラット、迷路をクリア
目が見えないラットの脳に地磁気センサーを埋め込むと、わずか2日の訓練で迷路内のエサを見つけられる――。東京大学の池谷裕二教授らが、4月3日付の米科学誌カレント・バイオロジー電子版で発表した。地磁気というラットが元々は感知できない情報でも、脳は柔軟かつ迅速に適応し、五感と同様に「地磁気感覚」として有効活用できることを示す。
実験では、地磁気を感知して電気信号を送る脳チップを作成してラットの脳内に埋め込み、ラットが北を向いていると右側の一次視覚野を刺激し、南を向いていると左側の一次視覚野を刺激するように設定した。迷路の東側にエサを置き、北側あるいは南側からラットをスタートさせて訓練したところ、迷路内で曲がるべき方向を速やかに学習できた。
さらに複雑な環境でも地磁気感覚を活用できるか調べるため、五本腕迷路試験を行なった。五本の腕のうち三本の腕の先のいずれかからラットをスタートさせ、残る二本の腕の先にあるエサを2つとも食べるのに掛かった時間と、間違えてエサのない腕に進入した回数をカウントするというもの。すると、脳チップを埋め込んだラットは目の見えるラットと同じようにエサの位置を把握できるようになった。
また、この試験を行なった翌日、脳チップの電源を切った状態で同じ迷路に挑戦させたところ、はじめは成績が大きく落ちるが、その日のうちにエサにたどり着けるようになった。地磁気感覚を通じて迷路を経験していたので、目が見える状態と同様に土地勘が得られたためと考えられる。