人権訴訟の結果をAIが予測

欧州人権裁判所で審問された人権訴訟の結果を、人工知能システム(AI)が正しく予測したと10月23日、BBCが報じた。AIによる判決の予測精度は79%だったという。今回の研究は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)およびシェフィールド大学、ペンシルベニア大学の研究者により実施された。人権訴訟へのAI適用を目指したものであるが、これにより、法律家という職業がなくなることを意味するものではないという。

現在、報道や司法、会計といった分野でのAIの活用が増加しつつある。例えば、今年5月には、米国最大規模の法律事務所であるBakerHostetler(ベーカー・ホステトラー)が、IBMのWatson(ワトソン)を利用した「ROSS」を破産訴訟の弁護士として採用したことが報道された。

研究チームは、人権条約の以下3つの条文に関連する584の訴訟について、英語のデータを用いた。
第3条 (品位を傷つける取り扱いを含む拷問の禁止)
第6条 (公正な裁判を受ける権利)
第8条 (私生活の尊重についての権利)

条文の選定理由は、基本的な権利に関する訴訟の代表的なものであり、かつ、数多くのデータが公開されているためである。

AIのアルゴリズムによって、テキスト内のパターンを検索し、各訴訟について違法、あるいは合法を分類できる。偏りや誤学習を防ぐため、違法と違法ではない訴訟の両方の事例を同数選んでAIの学習を行った。しかし、アルゴリズムは、一つが違法であり、もう一つが合法という2つの類似した訴訟に関しては、判定を間違える傾向にあった。これは、より微妙な法の機微については検出できないことを示唆している。

この研究を率いる、UCLのNikolaos Aletras(ニコラオス・アレトラス)博士は、「AIは、過大評価されている部分があるが、裁判官や弁護士がすぐにAIに取って代わられるということはないだろう。確実なことは、訴訟である程度の結論を導くパターンを迅速に特定するためことに役立つということだ。また、欧州人権条約に違反する可能性が最も高い訴訟を明確にする、価値あるツールとなり得るであろう」と述べている。

研究の次の段階は、目撃者や弁護士のメモにある供述記録を含め、より多くのデータを用いてシステムの検証をすることであるという。

(写真はイメージ)

 
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