たばこと発がんリスクの関係を確認 DNA突然変異が増加
国立がん研究センターを含む日英米韓国際共同研究グループは、喫煙が肺がんや咽頭がんにとどまらず、膀胱や腎臓などのがん化にも関わっていることを明らかにした。同グループががんの引き金になる「DNA突然変異」と喫煙の関係を調査した結果、喫煙による特有の変異パターンが存在することが分かった。喫煙が突然変異を誘発していることが再確認され、がんの予防には禁煙が重要であることが示された。4日付の米科学誌『サイエンス』に掲載された。
世界保健機関(WHO)は、喫煙が肺がんをはじめとする、さまざまながんの原因となると結論づけている。また多くのがんで、喫煙年数が長いほど、1日の喫煙本数が多いほど、また喫煙開始年齢が若いほど、がんのリスクが高まることが示されている。一般に、たばこに含まれる発がん物質がDNAの突然変異を引き起こすことで、細胞ががん化すると考えられているが、がんには生活習慣や遺伝などのさまざまな要因が存在するため、いまだに喫煙との関連を否定する研究者も少なくない。
今回、5200以上の症例データをもとにした解析の結果、喫煙者に発症したがんでは、非喫煙者に発症したがんと比較して、遺伝子変異の数が多いことが統計的に確認された。この結果によると、1年間毎日1箱のたばこを吸うと、肺に150個の突然変異が蓄積する計算になるという。さらに、喫煙者と非喫煙者のがん細胞のDNAを調べた結果、喫煙者のがんに特有の変異パターンが確認された。がんを発症した臓器ごとに調べると、肺や喉頭部だけでなく、膀胱や腎臓にも喫煙者のがんに特徴的な変異パターンが存在することが明らかになった。
喫煙が突然変異を誘発し、がんの発症に影響していることが、ゲノム解析により明らかになった。今後、たばこ由来の発がん物質がどのようなメカニズムで突然変異を引き起こすのか、詳細を明らかにしていくという。