インフルエンザワクチン、効率・迅速な供給へ一歩 東大が成果
東京大学の河岡義裕教授らが、培養細胞でも増殖する力が強いB型インフルエンザウイルスの作成に成功した。既に開発している増殖する力の強いA型インフルエンザウイルスと今回作成したB型インフルエンザウイルスでワクチンを製造すれば、季節性インフルエンザのワクチンを効率よく迅速に供給することが可能になる。米国科学アカデミー発行の機関紙『米国科学アカデミー紀要』のオンライン版で5日に公開された。
現行の季節性インフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵の中で増やしたウイルスから製造されている。しかし、その製造過程でインフルエンザウイルスの主要抗原「ヘマグルチニン」(HA)に変異が起きると、ワクチンの有効性が大きく低下してしまう。一方、培養細胞の中で増やせばそういった変異は起きにくいが、季節性インフルエンザウイルスの増殖する力が弱くなるため、十分に増やすのに時間がかかるという問題があった。
今回、河岡教授らは1999年に開発した「リバースジェネティクス法」を用いて、さまざまな変異をもったB型インフルエンザウイルスを作り、細胞培養ワクチンの製造でよく利用されている細胞に繰り返し感染させ、増殖する力が強いものを選び出した。次に、この変異を持つウイルスと野外で流行しているウイルスを掛け合わせたハイブリッドのウイルスを作り、培養細胞内で増殖する力を調べたところ、ハイブリッドのウイルスも効率よく増殖することが確認できた。
画像提供:東京大学医科学研究所・AMED・JST