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人間の脳をAIで再現? 東北大が「スピントロニクス素子」で実証

人間の脳をAIで再現? 東北大が「スピントロニクス素子」で実証

東北大学の大野英男教授らは、「スピントロニクス素子」を使った人工的な神経回路網(ニューラル・ネットワーク)で、人間の脳のように連想記憶動作を実現できることを実証したと発表した。応用物理学会の英文レター論文誌「アプライド・フィジックス・エクスプレス」の電子版に20日掲載された。

近年、「脳」の情報処理機構をまねて効率的に認識・判断することを目指す「人工知能(AI)」技術が非常に注目されている。AIは社会の一部で実用化されているが、従来の半導体集積回路技術の枠組みに基づいているため、高速であっても小型・低消費電力はまだ実現できていない。高速・小型・低消費電力を兼ね備えるには、脳において記憶を司る「シナプス」の役割を単独で果たす固体素子の開発が求められる。さらに、この人工シナプス素子が、生体のシナプスと同じくアナログ的に状態を変化させることができ、その状態を長時間に渡って保持し、かつ無制限に更新できることが望まれる。

東北大学のグループは「スピントロニクス素子」に注目。スピントロニクスは、エレクトロニクスが「電子の電荷」を扱うのに対し、「電子のスピン(回転)」を扱うもので、新しい素子として注目されている。同グループが最近開発した磁石材料から構成されるスピントロニクス素子は、従来とは異なり、アナログ的に「0」から「1」までの連続的な値を記憶することができる。

今回、これをシナプスとして用いて人工的な神経回路網を構築し、従来のコンピューターが苦手とする連想記憶という動作を検証した。具体的には、3×3ブロックにおける「I」「C」「T」の3つのパターンのいずれかから1ブロックを反転させたパターンを与え、元となったパターンを想起するという試験を行った。多数回の試行を通して、開発したスピントロニクス素子は期待通りに学習機能を発揮し、構築した人工神経回路網が人間の脳のように連想記憶動作を実現できることを実証した。

今回の技術を用いることで、高速・小型・低消費電力性を兼ね備えたAIが実現可能となり、AIの適用領域が顔認識、音声認識、ウェアラブル端末、センサーネット、介護ロボットなど、社会のさまざまな分野へと拡大していくことが期待される。

画像提供:東北大学

 
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