霊長類の約60%が絶滅の危機
米イリノイ大学のポール・ガーバー教授は18日、霊長類の約60%が絶滅の危機に瀕しており、約75%が衰弱して個体数が減少していることを発表した。米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。
私たちと生物学的に近い存在である霊長類は、人類の進化や生物学的な分野において、新たな疾患などに対する新たな洞察を提供してくれる。また、熱帯生物多様性の重要な要素であり、森林の再生と健全な生態系にも貢献している。現在、霊長類は中南米、アジア、アフリカの主に熱帯域に79属504種が存在しているが、約60%が絶滅の危機に瀕しており、約75%が衰弱して個体数を減らしている。
この状況に至った原因は、霊長類の生息地への人為的圧力の高まりだ。霊長類が生息している地域において、人間による農業の拡大、大規模な牧畜、森林の伐採、石油やガスの掘削、鉱山での採掘、ダムの建設、新しい道路網の建設などが行われ、広範な生息地が失われている。その他の重要な要因として、野生動物の肉を求める狩猟、ペットとしての違法貿易の増加、気候変動やヒト媒介性の疾患などの新たな脅威も挙げられる。これらの要因はしばしば相乗効果で作用し、霊長類の個体数の減少に拍車をかける。
霊長類の生息域は、貧困層が多く、人口が急増している地域と重なっている。このことを踏まえると、霊長類の絶滅リスクを直ちに解消し、持続可能な方法で地域の人間のニーズに応えるためには、世界的な関心が必要だろう。霊長類の窮状と生態系の健全さが失われることに対する科学的・公的意識を高めることが必要不可欠だ。
画像提供: Claudia Valeggia(Yale University)/Owl Monkey Project, Formosa-Argentina