生態系で「ハブ」担う生物種 特定に新手法、京大が開発

生態系で「ハブ」担う生物種 特定に新手法、京大が開発

京都大学を中心とする4カ国合同研究チームは、多数の生物種と関わりをもつハブとして生態や進化に影響を与える「ハブ生物種」を特定する手法を開発した。数百、数千の生物種の中から「優先的に研究すべき種」を選定する作業の大幅な効率化が期待され、生態系全体の動態の理解や環境保全への応用につながるという。1月24日付の英科学誌『ネイチャー・エコロジー・アンド・エヴォリューション』に掲載された。

従来の研究では、個々の研究者が限られた生物群のみを研究対象としているため、生態系全体の構造に関する知見が限られていた。また、生態系は無数の生物種が複雑に関係し合っているため、研究する上で「まずどの種から研究すべきか」を決めること自体が大きな問題だった。

今回、研究グループは、生物が必ず持っている「DNA情報」に着目。例えば、肉食動物のふんや腹から採取したサンプルには、肉食動物自体のDNAだけでなく、食べた餌種えさだねのDNAも含まれる。こうしたDNAに関する情報を集めれば、食う・食われる関係や共生・寄生関係に関する大規模な「ネットワーク構造」の推定が可能になるという。研究グループは、このネットワークの情報から、より多くの種と関わりのある「ハブ生物種」の把握を目指してデータ解析を行った。さらに、1カ所の生態系だけではなく、複数の地点の情報を統合することで、ネットワークの中心に位置する「幅広い地域の生態系で繰り返しハブとして出現する種」の絞り込みも行った。

研究グループは、重点的に保全すべき生物種を特定することで、将来的に生態系全体の機能の保全や、農地生態系の中から病害虫の発生を陰で抑えている微生物の特定が可能になるかもしれないとした。今後、この手法で選別された種が実際に重要な働きをしているのか、検証研究を展開していく予定だ。

(写真はイメージ)

 
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