草刈りのにおいが作物の防衛力を強化 ダイズで実証
生育初期のダイズ株が草刈り由来の雑草のにおいに触れると、株の防衛能力が向上し、さらに種子に含まれるイソフラボン量が増加することを京都大学などの研究グループが明らかにした。植物が放つにおいに他の植物が反応する「植物間コミュニケーション」が、草刈りのにおいでも確認されたことになる。1月30日、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。
植物は「におい」を介してコミュニケーションをすることが近年の研究で明らかになっている。例えば、植物は虫に食べられると特別なにおい物質を放散し、虫の天敵を自身の「ボディガード」として呼び寄せる機能があることが報告されている。さらに、周りの植物がこのにおいを感知すると危険を察知し、さまざまな防衛レベルを前もって高めるような反応をすることが知られている。研究グループは、このような「植物間コミュニケーション」が、農作業の中で行われる草刈りで生じるにおいでも起こると予想し、野外での実証を行った。
研究グループは、裁断した雑草のセイタカアワダチソウを網に入れ、ダイズ畑の中に設置し、生育初期の2〜3週間のみダイズを「草刈りのにおい」に触れさせた。その結果、草刈りのにおいに触れたダイズは、においに触れていないダイズと比較して、害虫による葉の被害、種子への被害が小さかったという。さらに、収穫したダイズ豆中のイソフラボンの量を調べると、草刈りのにおいに触れた株から収穫したダイズの方がイソフラボンの量が多いことが確認された。
今回の研究から、植物間コミュニケーションが世代を超えて作物に影響を与えていることが明らかになった。今後、草刈りのにおいによって作物が強くなることを利用した害虫対策などへの応用も期待される。
(写真はイメージ)