熊本地震で一時的に温泉が止まった原因判明 九州大学
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の辻健准教授らの研究グループは、熊本県阿蘇市の阿蘇内牧温泉が昨年4月の熊本地震の影響で一時的に止まっていたのは、枯渇ではなく、地下における地層の水平方向の滑りが原因だったことを明らかにした。同大学のサイトで21日に公開した研究成果は、20日付の英科学誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。
研究グループは、まず衛星データを使い、内牧温泉周辺の変動を調査。水平距離で約2kmにわたる地域が北西方向に1.5mほど移動していたことが明らかになった。同グループによると、この変動はこれまで知られている断層運動では説明がつかないという。
また、地震によって温泉が止まった井戸に特殊カメラを入れて観察したところ、深度50m付近で井戸が変形していたほか、掘削装置が深度50mで曲がるなどさまざまなデータから地下で生じた変動を直接観測した。当初、温泉が止まった現象は枯渇によるものだと考えられていたが、今回の調査から、深度50mの地層で生じた液状化による変動の影響で井戸が破壊されたことで生じたものだと判明。実際に温泉が止まった井戸の横を掘ってみると、温泉が湧き出てきたという。研究結果のメカニズムによって、一部の井戸で自噴したことや温泉周辺で見られた大きな亀裂の原因の説明がつくとしている。
画像提供:九州大学