歯石に含まれた古代DNAから描かれる、ネアンデルタール人の暮らし
ネアンデルタール人の行動、食事、疾患などがDNA解析によって明らかになった。今回、オーストラリア・アデレード大学のローラ・S・ウェイリッチ氏らの研究チームが、ネアンデルタール人の歯石標本(5点)から採取した古代DNAを解析し、ネアンデルタール人の地域差による特徴を英科学誌『ネイチャー』オンライン版で8日に発表した。
ネアンデルタール人と現代人との間に複数の相互作用があったことが最近のゲノムデータから明らかになっているが、これまでネアンデルタール人の行動や食事、疾患に関して遺伝子に基づく証拠はほとんどなかった。
ベルギーのスピ洞窟のネアンデルタール人の食生活は肉中心で、草原の毛深サイや野生の羊のDNAが検出された。一方、スペインのエル・シドロン洞窟のネアンデルタール人から肉は検出されず、キノコや松の実、苔を食べていたことが分かった。食餌の違いは、口腔内の細菌コミュニティ(
また、スペインのネアンデルタール人からは歯周病の病原菌と慢性胃腸炎の病原菌が見つかった。あわせて、天然の鎮静剤であるポプラ(アスピリンの有効成分であるサリチル酸を含む)やアオカビの一種であるペニシリウム属菌類(抗生物質を産生する)のDNAも見つかった。治療効果を期待して自己投薬をしていた可能性がある。
また、この個体からは、歯周病を引き起こす古細菌共生菌のほぼ完全なゲノムを同定することもできた。この細菌は約4万8000年前のもので、これまでに同定された最古の微生物ゲノムとなった。
(写真はイメージ)