人類誕生の地 ヨーロッパの新説
人類はアフリカで誕生したというのが現在の定説だ。しかし、南ヨーロッパのバルカン半島で発見された720万年前の化石を改めて分析した2つの論文から、最古の人類がヨーロッパに存在していた可能性が示された。どちらもドイツのエバーハルト・カール大学テュービンゲンの研究者らによるもので、米オンライン科学誌『プロスワン』で22日に掲載された。
1つ目の論文では、ギリシャのアテネ付近で1944年に発見された717万5000年前のグラエコピテクス属フレイベルギ種の下顎の化石と、ブルガリアのチルパン付近で発掘された724万年前のグラエコピテクス属の上顎の小臼歯の化石について、コンピューター断層撮影法を用いて内部構造を調べた。現代の類人猿や人類と比較した結果、グラエコピテクス属はチンパンジー系統と分岐した後の人類系統に属する可能性が高いとしている。
もう1つの論文では、この2カ所の化石が見つかった地層を地質学的に分析し、グラエコピテクス属が活動していた環境を推定した。論文によると、当時は北アフリカの広い範囲で乾燥化が進み、塩分を含んだ砂塵がヨーロッパに吹き付けていた。砂塵を含んだ大気で太陽が遮られ、地中海の表面温度は約7度まで低下。地中海沿岸の劇的な寒冷化によって、南ヨーロッパではサバンナの草原が広がるようになったことがわかった。こうした環境の変化が、動物相の変遷を引き起こした可能性が高いという。
グラエコピテクス属は、環境の変化に適応してヨーロッパでチンパンジー系統と分岐して誕生したのだろうか。それとも、さらに以前にアフリカで誕生し、環境の変化に伴ってヨーロッパへと移住してきたのだろうか。
画像提供:エバーハルト・カール大学