30万年前のホモ・サピエンスの化石 モロッコで発見
現在確認されている中で最古となるホモ・サピエンスの化石がモロッコで発見され、これによりホモ・サピエンスの進化の歴史についての通説が覆される可能性が出てきた。英国自然史博物館地球科学部のクリス・ストリンガー氏とジュリア・ゴールウェイ=ウィザム氏、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所のジャン=ジャック・ユブラン氏が7日、それぞれ英科学誌『ネイチャー』で発表した。
今回見つかったホモ・サピエンスの化石は約30万年前のもので、ユブラン氏がモロッコの鉱山だったジェベル・イルードの遺跡を再発掘した際に発見。木炭とともに見つかったため、当時のたき火で石器が加熱されていたと考えられ、「熱ルミネッセンス年代測定法」を用いたところ加熱されたのが約35~28万年前であることが判明した。
今回、化石が見つかったのと同じ遺跡から、1961年と62年にも石器とともに人類の化石が見つかっていた。しかし当時は掘り出された地層が特定できず、何万年前のものかが判断できずにいた。また当時は現生人類がネアンデンタール人から進化したと誤って考えられていたことから、見つかった化石は「アフリカのネアンデルタール人」と呼ばれた。その後、70年代に大きさや形状を詳しく調べたところ、ネアンデルタール人とは異なる構造をしており、むしろホモ・サピエンスに近いことが特定された。しかし、それは子どものネアンデンタール人だからだろうと考えられた。
現生人類であるホモ・サピエンスの、これまでに発見されていた最古の化石はアフリカで見つかった20万年前のものだ。彼らは解剖学的に現代の私たちと同じ骨格をしていた。一方で、ネアンデルタール人やデニソワ人といった今は絶滅してしまった古人類は、私たち現生人類とは別の人類であったことが分かっている。少なくともこの3種の人類が数万年前までユーラシアに混在しており、互いに混血していたことも明らかになっている。
今回発表された論文では、新たにジェベル・イルードで見つかった頭蓋骨の脳は、現代の私たちの脳に比べて細長く、古人類に近い特徴を備えていたという。この化石は、これまで見つかっていなかった、より原始的な特徴を持った初期のホモ・サピエンスのものである可能性が考えられる。
画像提供:Nature