初期人類がなぜ地上で暮らし始めたのか 京大が新説
初期人類がなぜ木から降りて地上で暮らし始めたのか、京都大学霊長類研究所の竹元博幸研究員が新説を発表した。900~800万年前にアフリカ熱帯林の周辺で乾季が増えたため、樹上よりも涼しい場所を求めて地上に降りたのがきっかけだったことを、チンパンジーとボノボの観察によって裏付けた。研究内容は、18日に英学術誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された。
ヒトの祖先がいつ地上で二足歩行の生活を始めたのかは、これまでも当時の気候の変動や化石などからさまざまに議論されていた。竹元研究員は、「そもそもなぜ樹から降りたのか」という疑問を解明するため、気候の異なる森に住む2種類の霊長類ニシアフリカチンパンジーとボノボを観察。地上で過ごす時間と、森林内の気象や食物の量の季節ごと変化との関係を調べた。
その結果、季節変化の大きい森林に住むニシアフリカチンパンジーは、気温の低い雨季はほとんど樹の上で生活し、暑い乾季には地上で過ごす時間が大きく増えることが分かった。一方、気温の季節差があまりない森に住むボノボは、地上を利用する時間は少なく、変化もなかった。つまり、森林内気温の季節変化が地上利用時間を増やす要因となることが分かった。
このことから、ヒトはおよそ900~800万年前に始まった乾燥化をきっかけにして季節的に地上生活を始めていたため、熱帯林が後退した後の開けた環境にも適応することができたと考えられるという。竹元研究員は、気候変化が初期人類に与えた影響をより明確にするために、現在、他の地域のチンパンジーの行動についても調査を始めているという。
(写真はイメージ)