PM2.5や黄砂の分布予測精度向上へ 気象研究所と九大
気象庁気象研究所と九州大学の弓本桂也准教授らの研究グループは、黄砂やPM2.5などの粒子状物質(エアロゾル)の分布予測の精度を向上できる再現モデルを開発した。今後、気象庁の黄砂予測にも適用される予定。研究成果は、欧州地球科学連合の専門誌『ジオサイエンティフィック・モデル・ディベロップメント』に4日付けで掲載された。
PM2.5(粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質)などのエアロゾルは、大気中で太陽光や地上からの反射光を散乱・吸収したり、雲の生成に関わり雲の光学特性を変化させるなど、気候に大きく影響を与え、健康面では呼吸器系の深部まで到達しやすく呼吸器疾患や循環器系疾患に影響があるといわれている。また、海洋生物循環にも影響を与えているといわれている一方で、それらの影響の程度を評価するには、地球規模でエアロゾルの分布を正確にとらえる必要があった。
研究グループが開発している全球エアロゾル輸送モデルに、今回新たにデータ同化技術を導入し、衛星観測データを組み込んだ。その結果、過去5年分の分布状況を高精度に再現できた。緯度経度約1度間隔のマスで、6時間間隔で表示できる。エアロゾルの濃度、光学的な厚さ、沈着量などがわかる。
従来のモデルで再現できていなかった、2015年10月24日に東南アジアで起こった大規模森林火災による煙霧も、今回開発したモデルでは再現できており、再現の精度が大幅に向上していた。
今回開発したデータセットは、さまざまな研究に役立てられるよう広く公開し、今後、利用者からのフィードバックを取り入れ、さらに精度を高めていく。また、黄砂予測に応用するためシステムを開発しているという。
(冒頭の写真はイメージ)