小笠原の土壌生物壊滅の原因は外来生物、世界で初解明 東北大など
東北大学などの研究グループは2日、小笠原諸島の父島全域と母島の広範囲での土壌生物壊滅の原因が外来生物の陸生ヒモムシの一種であることを特定したと発表した。外来生物が侵入してから30年以上たって初めて明らかになった。
小笠原諸島の森林の土壌では、本土のミミズが果たしている「分解者」の役割をワラジムシ類やヨコエビ類などの陸生甲殻類が担う。これら陸生甲殻類の8割の種は小笠原の固有種だが、1980年以降急速に減り、父島で壊滅し、母島でも大半の地域で激減。この原因は未知の外来生物だと考えられていた。
今回の研究では、実験と野外調査からオガサワラリクヒモムシが原因であることを突き止めた。陸生ヒモムシの食性を調べると、ワラジムシ類、ヨコエビ類、クモや昆虫など節足動物を広く捕食することが判明。また、陸生ヒモムシの分布調査と土壌生物相の調査では、両者に関連があることが分かった。オガサワラリクヒモムシは1980年代初めに小笠原に侵入した外来生物の陸生ヒモムシの一種。
今回、世界で初めて、外来陸生ヒモムシが生態系に大きなダメージを与えていることが示されたが、排除方法や影響を緩和したりするための手段は今のところないという。侵入から30年以上たってから解明したことについて、同大は「生態系の維持管理のためには地道で目立たぬ基礎的研究をきちんと進める必要があることを強く示唆している」と述べている。
研究は同大大学院生命科学研究科の篠部将太朗氏(修士1年)らと、日本森林技術協会、自然環境研究センターの共同で実施した。
画像提供:東北大学