フランスの「最も美しい村」(1)楕円形の城壁に囲まれた村 エギスハイム
観光大国フランスには、花の都パリ、港街マルセイユ、美食の都リヨンなど誰でも一度は聞いたことのある名所が数多くある。しかし、フランスの魅力は大都市だけではない。実は田舎の小さな村にこそ、隠れた魅力がたっぷり詰まっている。
こういった歴史遺産としての価値を持つ数々の村を保護し、なおかつその価値を高め、観光に関連した経済活動を促進することを目的に1982年、「フランスの美しい村協会」が発足した。現在、156の村が「最も美しい村」として同協会から認定を受けている。認定された村の入口には「最も美しい村」のロゴの入った看板が掲げられている。
このシリーズでは、この美しい村々を訪ね、フランスのより深い魅力を紹介していきたい。
今回紹介するのは、フランス東部グラン・テスト地域圏にあるエギスハイム(eguisheim)だ。オ・ラン県の県庁所在地コルマールから、エギスハイム行きのバスが1日に数本出ており、20分足らずで行くことができる、比較的アクセスのよい場所に位置する。ただしバスの本数は多くないので、時刻表の事前チェックは必須だ。
この村の特徴はなんといっても村の形にある。城を中心に二重の城壁に囲まれた村の形は楕円形で、木組みの家が立ち並ぶ中を歩いていると、20分もしないうちに1周できてしまうほどの小ささだ。石畳と木組みの家、そして色とりどりの花によって彩られた村の景色はどこをとっても絵になり、まるで何世紀か前にタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。村の規模に対してレストランやカフェの数も多く、お茶をしながらのんびりした雰囲気に浸るのもこの村の過ごし方の一つだ。
村の中心部にある広場に建つ像は、エギスハイム出身のローマ教皇、レオ9世。彼はキリスト教徒の平和を追求し、ヨーロッパ中を歩き回りながら教会改革の足がかりを作った人物と評されている。
エギスハイムは2013年に「フランス人が選んだ一番好きな村」にも選ばれている。ドイツにも程近いアルザス地方にあるこの村は、フランスにありながらドイツの要素も併せ持ち、美しいものに目の肥えたフランス人から愛される、魅力あふれる村だ。コルマールまで来た際には、ぜひ立ち寄ってみていただきたい。
(写真は2017年6月24日に撮影)