IUCNレッドリスト更新を発表 野生の作物種に絶滅危惧

IUCNレッドリスト更新を発表 野生の作物種に絶滅危惧

国際自然保護連合(IUCN)は5日、絶滅の恐れのある生物を記載するレッドリストの更新内容を東京で発表した。

新たなレッドリストでは、野生のイネ、ムギ、ヤムイモが絶滅の脅威にさらされていることが明らかになった。イネの場合は今回評価対象となった25種中3種、ムギの場合は26種中2種、ヤムイモの場合は44種中17種がレッドリスト入りした。これらの多くは、今回初めて評価の対象となったもので、脅威にさらされている原因としては、森林伐採、都市膨張、過剰放牧と、除草剤を広範に使用する集約農業などが挙げられるという。

一方、アジアに生息するイルカの仲間、カワゴンドウとヨウスコウスナメリが急激に減少しており、絶滅危惧II類からIB類へとカテゴリーが変更された。両種とも海の浅いエリアに生息しており、人間の影響を受けやすく、漁網の設置が減少の主な原因とされる。

オーストラリアのニシリングテイルポッサム(長い尾を持つ樹上動物)は、過去10年間で80%以上もの減少が確認されており、絶滅危惧II類からIA類へと変更された。急激な個体数の減少は、生息地の開発による乾燥化や温暖化が原因とされる。

日本固有の動物では今回、46種のヘビ類とトカゲ類の3分の1が絶滅危惧種に分類された。主な原因は持続可能性を考慮しない農業と、市街化に伴う生息環境の破壊とされるが、ペット取引用の捕獲とインドクジャクやニホンイタチなどの侵略性種による捕食も原因と見られている。

IUCN事務局長のインガー・アンダーセン氏は、「野生の作物種は農作物の遺伝的多様性を保ち、気候変動に適応し、食料・栄養安全保障を確実なものにすることができる」として、野生作物種レッドリスト入りの深刻さを強調した。

画像提供:IUCN
 

参考記事
IUCNレッドリスト更新、キリンが絶滅危惧種に指定(2016/12/12)
トヨタ自動車、IUCNレッドリストの強化を支援(2016/05/14)