現生人類の「出アフリカ」、12万年前よりも早かった
2002年にイスラエルの洞窟で発掘された上顎の化石が、アフリカ以外で発見された最古の現生人類(ホモ・サピエンス)のもので、19万4000~17万7000年前のものである新たな可能性が示された。現生人類がこれまで考えられていたよりも数万年早くアフリカを離れていたことになるとする新説が、26日付の米科学誌『サイエンス』に掲載された。
これまで、アフリカ以外で発見された最古の現生人類の化石は、イスラエルのカルメル山の南麓にあるスフール洞窟や、イスラエルのナザレ近くにあるカフゼー洞窟で見つかった約12万~9万年前のものだった。そのため、現生人類の「出アフリカ」は早くとも12万年前と考えられてきた。
今回、新たに検証された化石は、2002年にカルメル山のミスリヤ洞窟で発掘されたもの。ミスリヤ洞窟は山の西斜面に位置し崩壊状態だったが、そこで堆積物を掘削中に、ほぼ完全な歯列を持つ左上顎の化石が発見された。形態学的特徴から、我々と同じ現生人類のものと判断された。一緒に見つかった犬歯や他の歯は、スフール洞窟やカフゼー洞窟で見つかった現生人類のものに似ており、ネアンデルタール人の特徴はなかった。また、この堆積物には、原石を入念に加工して定型的な剥片を
現生人類が18万年前ころにはイスラエル近辺に進出していたという今回の結果は、「22万年前に現生人類が出アフリカした」との可能性を提唱している、DNA分析に基づく遺伝学的研究の結果とも一致している。
論文の共同筆頭著者であるイスラエル・テルアビブ大学のイスラエル・ヘルシュコビッツ教授は、「我々の祖先がこれまで考えられていたよりもはるかに早く起こった」として、「私たちの種が20万年前にイスラエルにいたのならば、現生人類は30万歳どころか更に古いことを示している」と述べている。
画像提供:Science