今さら聞けない! 仮想通貨・ビットコインって?【ニュースのコトバ解説】
最近世間を騒がせている仮想通貨。2017年は「仮想通貨元年」とも呼ばれ、その爆発的な普及とともに、一定の法的な整備がなされた年でもありました。画期的な金融システムだとメディアなどで取り上げられる一方で、一瞬にしてばく大な損失を被るなど、報道を見ていると恐ろしいイメージも先行しますが、どのような仕組みで運用され、どんなメリットが私たちの日常にあるのでしょうか。
仮想通貨とは
仮想通貨とは、インターネット上において通貨としてやり取りできるもののことです。データを暗号化する高度なIT技術(フィンテック)を駆使して作られた暗号通貨で、そのうちで代表的なものが、皆さんご存知の「ビットコイン」です。2017年1月初めには2兆円だった暗号通貨の全世界における市場規模は、12月には50兆円にまで膨れ上がり、ビットコインはそのうちの63%を占めています。市場規模50兆円とは、ちょうど日本の自動車の市場規模(海外売上含む)と同じくらいです。
お金が「お金」である理由
ビットコインとは暗号通貨における先駆け的存在であり、2009年にサトシ・ナカモトによって考案されました。投資している日本人の割合が最も高い仮想通貨も、この「ビットコイン」です。その特徴の最も大きなものが、円やドルといった普通の通貨と異なり、国家が管理している通貨ではないということです。ここには、「信用」というお金そのものに関する根本的な問題がかかわってきます。
そもそも、お金はどうして「お金」なのでしょうか。私たちが普段使っているお札は、よくよく考えてみると、言ってしまえばただの紙切れです。そんな紙切れを、どうして本や食べ物などと交換することができるのでしょうか。それは、「みんな」がその「紙切れ」を「お金」と認識しているからです。そのためには、その「紙切れ」が特別な「紙切れ」だという証拠が必要です。私たちはそれを「日本銀行」という場所に求めています。「日本銀行」のお墨付きがあるから、みんなそれを「お金」として使っているのです。自分でお札のようなものを作っても使えないのと同じ理由です。しかし、ビットコインはそうした中央集権的な管理者を持ちません。それでは、一体何で信用を保っているのでしょうか。
ビットコインに欠かせない「ブロックチェーン」
そこで登場するのが、「ブロックチェーン」という仕組みです。ビットコインをやり取りすると、その取引データはすべて暗号化され、ビットコイン利用者全員で共有されます。これにより、一部のデータ改ざんを防ぐことができます。このデータは自分が関係する・しないにかかわらず、全世界のすべての人の分が記録され、かつそれが全世界の利用者全員に共有されています。いわば全世界共通の通帳に、取引の全記録が記帳されているようなものです。このため、一人がデータの一部を改ざんしようとしても、ほかの人がそれを監視することができます。こうした集団の原理を利用して、ビットコイン自体の信用性を保っているのです。
ビットコインはどうしてここまで注目を浴びたのか
ビットコインはもともと国際的な決済手段として注目されました。外国へ現金を持って行くとき、両替をすると手数料がかかりますし、戻ってくる時には自国の通貨に再両替しないといけないので手間もかかります。しかしビットコインならインターネット上で取り引きができるので、スマホ一つで世界共通の通貨のようにどこでも利用できます。手数料も安く、反映の時間が10分ほどと早いのも魅力です。こうしてビットコインが注目を集め、多くの人が利用するようになると、ビットコイン自体の価値がどんどん上がり、1ビットコインあたりの値段が上がりました。こうした特性に着目した人たちが、リターンを得ようと投機(短期間で儲けることを目的に投資すること)をした結果、ここまで話題になったのです。今のところ、ビットコイン利用者のほとんどが投機目的だといわれており、「儲かる!」といった言葉と一緒に使われることが多くなったのは、このような理由です。
また、仮想通貨がここまで注目されるようになったものとして、「ICO」という資金調達手段があります。こちらについては、次回の記事で解説したいと思います。
仮想通貨・ビットコインのこれから
ここまで、仮想通貨やビットコインについて説明してきました。では、これらは私たちの実生活にどう役立つのでしょうか。
・手数料がかからない
クレジットカードや銀行振り込みといった手段での送金は、手数料が発生します。しかし仮想通貨では、インターネット上での取り引きのみのため、第三者を介する必要がなく、手数料が発生しません。
・時間的・空間的制限がない
円と米ドルであれば、日本とアメリカの間で距離や時差がありますし、銀行振り込みであれば、「午後3時以降は翌営業日扱い」という時間的な制限もあります。ビットコインは管理者がいないため、時間的・空間的な制限を受けません。そのため、24時間365日、国境を越えて利用できます。
・匿名性が高い
ビットコインの決済は、「公開鍵」と「秘密鍵」という、IDとパスワードのようなものだけでできます。公開されるのはIDの方だけで、そこに入金や出金の命令が届きます。システム上で個人情報と結びついていないため、IDは公開されていても、それが誰のものかまではわかりません。
一方で、このようなデメリットもあります。
・値動きが大きく、価格の予想が立てにくい
特にビットコインは値動きの幅が大きく、たった1日で1ビットコイン当たり70万円近くも動いたこともあります。大きく値上がりすることが期待できる反面、一気に損を被ることにもなりかねません。ビットコインは、「株式が上昇すれば債権価格が下落することが多い」といったような、ほかの資産との関連性が乏しいです。そのため、価格の展望を立てにくいといえます。また、手数料は不要とはいえ、年間20万円以上の利益が出ている場合は税金が発生することにも注意が必要です。
・安全性の問題
1月26日、仮想通貨取引所のコインチェックから大量の仮想通貨が流出し、被害総額は580億円に上るといわれました。このような安全性の問題も懸念事項です。
・利用できる店が少ない
ビットコインでの決済を取り入れる店も最近増えてはきましたが、その数はまだまだ少ないのが実情です。
「お金」の概念を覆す、画期的な仮想通貨。社会を変革し私たちの生活を便利にしてくれる側面を持つ一方で、ギャンブル性があることも確かです。分かって賢く付き合いたいものです。
(写真はイメージ)