木材の強度が10倍になる方法を開発 実用化に期待大

木材の強度が10倍になる方法を開発 実用化に期待大

天然の木材を簡単な加工で10倍以上強靭きょうじんにし、高性能な構造材にする方法を米メリーランド大学のリアンビン・フー准教授とテン・リー准教授らのグループが発表した。8日付の英科学誌『ネイチャー』に掲載された。

強度や靭性じんせいなど機械的性質にすぐれる合成構造材料は、重くて環境負荷が高い(例:鋼および合金)か、複雑な製造プロセスを要する(例:ポリマー系および生体模倣複合体)ために、高コストであるなどの問題を抱えている。一方、天然にある木材は低コストで豊富にあり、建築や家具の構造材として数千年にわたって使用されてきた実績もある。しかし、天然木材の機械的性質は、多くの工学的な用途には十分なものではない。そこで、さまざまな前処理で木材を緻密化することが研究されてきたが、既存の方法では緻密化が完全でなく、特に湿潤な環境で寸法の安定性を欠いていた。

今回、同研究グループにより、2段階のプロセスで強度、靱性などが10倍以上も向上し、寸法の安定性も向上する簡単で効果的な方法が開発された。まず、第1段階では水酸化ナトリウムと亜硫酸ナトリウムの混合溶液中での沸騰プロセスにより、木材の構成成分として重要なリグニンとヘミセルロースを取り除く。第2段階として、続けて加熱しながらプレス加工することで細胞壁を壊し、高度に整列したセルロースナノ繊維を持ち、完全に緻密化した構造材にすることができるというものだ。

この方法は、さまざまな種類の木材に対して普遍的に適用できるという画期的なもの。しかも、この方法で加工した木材は、ほとんどの構造用金属や合金よりも比強度(密度当たりの引っ張り強さ)が高く、低コストで高性能、軽量であることから、今後の実用化が大きく期待される。

木材の強度が10倍になる方法を開発 実用化に期待大
左は木の断面の電子顕微鏡写真、右は加工後

画像提供:ネイチャー
(冒頭の写真はイメージ)