2018年問題(2)改正労働契約法で変わる有期雇用【ニュースのコトバ解説】
2つの「2018年問題」が注目を集めています。前回は、「18歳人口の減少」に関する問題について解説しました。今回はもう1つの2018年問題、「改正労働契約法と改正労働派遣法による有期雇用労働者(派遣社員など)に関する問題」について解説していきます。
有期雇用をする側・される側に生じる問題
問題とされているのは、2013年に施行された改正労働契約法の影響と、2015年に施行された改正労働派遣法の影響が、いずれも2018年に出始めることです。
どのような影響が出るのでしょうか? まず、改正法に応じて、多くの企業で就業規則の改訂や社内制度の整備などが必要となります。そして、契約社員やアルバイトなど期間の定めのある契約を結んでいた労働者の契約更新を行わず、契約期間の満了により雇用が終了する「雇止め」が多く起きることが懸念されています。
雇用の安定化をはかる「無期転換ルール」
なぜ、雇止めが多発すると考えられるのでしょうか? それには改正法で始まった「無期転換ルール」が深く関わっています。
無期転換ルールは、2013年4月1日に施行された改正労働契約法によって定められました。同一の使用者(企業)との間で、期間の定めのある労働契約が通算で5年を超えて1回以上更新された場合、契約を結んだ労働者から使用者に申込むことで、期間の定めのない労働契約に転換できるというルールです。つまり、5年以上続けて働けば、有期雇用から無期雇用に転換できるというわけです。労働者が無期転換の申し込みをした場合、企業側は断ることができません。このルールは契約の形態によらず、契約社員やパートタイマー、アルバイトなど期間の定めのある労働契約すべてに適用されます。
2013年4月の施行より前からの契約は対象となりませんが、早ければ施行から5年が経過する2018年4月以降、契約を更新すれば無期転換の申込権が生じることになります。不安定な雇用形態をなくすのが、このルールのもともとの狙いなのです。
無期転換ルールの注意点
ただし、無期転換後の雇用形態は使用者側で決めることとなっていますので、必ずしも正社員になるわけではありません。給与や待遇等の労働条件については、労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがある場合を除き、直前の有期労働契約の際の労働条件が引き継がれます。
また、無期転換は自動的に転換されるのではなく、労働者側から申し込む必要があります。つまり、通算で5年を超えて更新していても、労働者側から無期転換の申し込みをしなければ、期間の定めのある労働契約のまま引き続き仕事をすることもできます。
なお、派遣社員の場合、派遣先の企業ではなく、派遣元の派遣会社に対して無期転換の申込権が生じます。「登録型派遣」の場合、単に派遣会社に登録している状態では、一般に、労働契約は結ばれていませんので、その期間は通算契約期間にはカウントされません。労働契約がない期間が一定以上あると、それ以前の分は通算契約期間に含まれなくなる場合があるので注意が必要です。
雇用の安定化をはかるためにこうしたルールが定められましたが、一方で、企業側が無期転換を避けるため、申込権が発生する5年が経過する前に「雇止め」をすることが懸念されています。すでに、複数の大手自動車メーカーでも「通算5年」を避けるために、契約を半年間解除して空白期間を設けていたことが明らかになっています。
最終回は、2015年の改正労働派遣法の影響について解説します。
(写真はイメージ)