「忘れられる権利」グーグルが3年間の経過まとめ 欧州の事例

「忘れられる権利」グーグルが3年間の経過まとめ 欧州の事例

プライバシーの侵害に当たる写真や動画、過去の犯罪歴やスキャンダルなど、当事者がインターネット上から消し去りたい特定の検索結果に対して、グーグルなどの検索エンジンに「削除するよう要請できる権利」。別名「忘れられる権利」が、欧州でどのように行使されているのかについて2月26日、グーグルが過去3年間の経過をまとめた最新リポートを発表、南ドイツ新聞がその詳細を報じた。

「忘れられる権利」は2014年5月、欧州司法裁判所がその正当性を認めたもので、公共性のない個人に関する、古くなった情報へのリンクを検索結果に表示しないように、一般市民が要求することができるとした。またEU加盟国以外のスイス、リヒテンシュタイン、ノルウェー、アイスランドでもこの権利は有効とされている。同判決を受けてグーグルは2014年5月29日以降、削除リクエストに関する「透明性リポート」を公開、毎日更新している。
Transparency Report

今回新たにグーグルがまとめた過去3年を振り返るリポートによると、2017年末までの削除リクエスト件数は237万件。リクエストはおよそ40万人の個人および企業から寄せられており、このうち半分はフランス、ドイツ、そして英国からとなっている。

公共性のある情報、または公人(政治家、著名人、宗教的指導者、スポーツ選手など)に関する情報は削除対象として認められない可能性が高いこともあり、削除リクエストを行なっている人の圧倒的大多数は一般市民だ。政治的地位を持たない芸能人など著名人の割合は4%、政治家や大臣などの割合は3%だった。また、未成年者は5%だった。削除リクエストが認められたケースは、EU平均で43%。これに対し、削除リクエストに積極的なドイツでは、これまでに40万9000件のリンクに対して削除要求が出されており、このうち48%に当たる20万件が削除されている。

削除リクエストが最も多かった対象媒体は、フェイスブック、グーグル+、ユーチューブ、ツイッターなどのソーシャルネットワークで、ドイツおよびフランスではこの傾向が特に強かった。その理由として、これらの国ではマスコミ報道において一部の大衆紙などを除いては、加害者に対しても匿名性を守る伝統が強いことが挙げられる。

グーグルが紹介している、削除リクエストが認められた例としては、以下のようなものがある。

●英国で、虐待を受けていた夫を殺害した後、自殺未遂を起こした女性についての10年以上前のニュース記事の除外がリクエストされた。
【結果】グーグルは当初、リクエストに応じなかった。しかしデータ保護局が、この女性が英国の法律の下で判決を受けており、他人に危害を加える様子がないという理由から除外するよう要請。これを受けて、この事件に関する3件のニュース記事が除外された。

●アイルランドで、家庭内暴力で訴えられていた人物が、「被害者の診断書が裁判官に提示されず負傷を確認できなかった」という理由で無罪判決になり、この件についての2014年のニュース記事を除外するよう求めた。
【結果】グーグルでは、その人物が無罪判決を受けたことを考慮し、問題の記事を除外した。

(写真はイメージ)