ドイツのフードバンク「ドイツ人優先」で困窮者支援論議
ドイツで困窮者のための食料品支援を行なっているフードバンク「ターフェル」エッセン支部が1月10日から「新規の利用者にドイツ人だけを受け入れる」としたことから、これに対する非難が殺到。困窮者支援論議がドイツで起こっている。
ターフェルは、スーパーなどで売れ残った食料品の寄付でまかなわれている民間支援団体で、ドイツ国内に930の拠点を持つ。しかし近年、ターフェルの利用者に若い難民の男性などが増加し、本来の救済対象であるドイツ人の高齢者やシングルマザーなどが不便を感じているとする声が寄せられていた。エッセンのあるノルトライン=ヴェストファーレン州は近年、ドイツでも最多の難民を受け入れており、これを受けてターフェル利用者に占める外国人の割合が現在では75%となっている。
今回「新規の利用者にドイツ人だけを受け入れる」方針を打ち出したターフェル・エッセン支部には「人種差別的だ」などとする非難のメールや電話が殺到。一方で、ターフェルを擁護する意見も多く、「困窮者支援は本来、国が責任を持つべき問題。民間の支援団体を非難するのはおかしい」との声が上がっている。
隣国のフランスでは2年前から、売れ残った食品の廃棄を禁じ、これを困窮者支援団体に寄付することを義務付ける法律が制定されている。食品ロス問題と困窮者支援問題を同時に解決できるこの法律を、今回の騒動を機にドイツでも導入するべきとの声が強く上がっているが、これに対しても「困窮者支援の根本的解決ではない」として疑問視する反対意見が根強い。
こういった論議が巻き起こる中で11日、ターフェル・エッセン支部は「新規の利用者にドイツ人だけを受け入れる」とした方針を、3月末で中止することを発表した。
画像提供:Tafel Deutschland e.V.