宇宙探査機ニューホライズンズ、「世界の最果て」への挑戦
米航空宇宙局(NASA)は米国時間の13日、2015年に冥王星を通過した探査機ニューホライズンズが次に目指す目的地の愛称として「ウルティマ・トゥーレ」が選ばれたと発表した。ウルティマは「究極の」という意味で、トゥーレは中世の文学や地図に描かれた神秘的な遥か北にある島のことだ。つまり、ウルティマ・トゥーレは、既知の世界の境界線を越えた「世界の最果て」を意味する。
初めて冥王星に接近した探査機
ニューホライズンズは2006年に打ち上げられ、2015年7月に史上初めて太陽系外縁にある冥王星をフライバイ(接近通過)し、多くの観測を行なった。その後、次の探査目標として冥王星と同じく太陽系の外縁にあるカイパーベルト天体「2014 MU69」が選定され、2019年1月1日にフライバイして観測する予定だ。
ニューホライズンズの主任研究員アラン・スターン氏は、「MU69は人類の次なる『ウルティマ・トゥーレ』です。ニューホライズンズは、私たちが知る世界の限界を超え、このミッションの次なる成果に向かっています。これまでで最も遠い天体の探査なので、NASAと私たちのチームはこの究極の探査を象徴するよう、次のフライバイのターゲットを『ウルティマ』と呼びたい」と述べた。
次なる“最果て” 天体「MU69」とは
MU69は、冥王星からさらに16億kmも外側にある。太陽からの距離はおよそ65億kmで、地球と太陽の距離の43.4倍にもなる。
大きさはわずか30~45kmしかなく、軌道は円形。他の惑星が公転している黄道面に近い面を公転しており、海王星の重力の影響を受けていない。これはすべて冥王星と大きく異なる特徴だ。冥王星は直径が2370kmあり、黄道面に対して17度も傾いた楕円軌道を通っている。また、海王星の重力の影響を受けて軌道共鳴状態にあるため、冥王星が2回公転する間に海王星は正確に3回公転する。MU69は、おそらく太陽系形成時の状態のまま、一度も加熱されたことがない天体と考えられている。
ニューホライズンズが実際にMU69をフライバイした後、MU69が単一の天体なのか、冥王星とその衛星カロンのように2つの天体のペアなのか、または複数の天体からなる集まりであるかなどに基づき、NASAとニューホライズンズのチームは、国際天文学連合に提出する正式名称を選択する予定だ。
3万4000件から選ばれた愛称
NASAとニューホライズンズのチームは、MU69にもっと魅力的な愛称を付けようと、昨年11月初めに愛称の公募を開始した。オンラインで一般から公募し、12月6日に締め切られた。この公募には世界各地から11万5000人が参加し、3万4000件の愛称が寄せられた。そのうち、37件が人気投票にかけられ、最も得票率の高かったのが「ウルティマ・トゥーレ」だった。
この公募を担当したニューホライズンズ科学チームのマーク・ショワルター氏は、「このように興味深く、インスピレーションに富んだ愛称を提案してくださった方々に感謝します。ニューホライズンズが具現化した、探求の精神を捉えた表現」だと述べた。
画像提供:NASA