市民問い合わせ窓口にLINE 「強靭なAI」で柔軟な回答目指す

市民問い合わせ窓口にLINE 「強靭なAI」で柔軟な回答目指す

国立情報学研究所(NII)は12日、兵庫県、尼崎市、丹波市、LINE、京都大学と連携協定を締結した。子育てや防災などの市民問い合わせ窓口にコミュニケーションアプリ「LINE」を活用できるよう、従来の自動対話プログラムでは柔軟に回答できなかったケースに対応できる「強靭な知能(RI)」の開発を目指す。さらに、問い合わせの傾向から潜在ニーズを解析し、社会課題の解決に取り組む。実証研究期間は同日から2019年3月31日まで。

今回の締結に先立ち、NIIとLINEは、社会課題解決のための知識基盤の研究に取り組むため、今月1日より共同研究拠点を設置している。同拠点の名称「ロバストインテリジェンス・ソーシャルテクノロジー研究センター(CRIS)」につけられている「ロバストインテリジェンス(RI)」とは、常に変化し多様性のある現実世界の環境に対応する強靱な(ロバスト)知能(インテリジェンス)のことだ。「ソーシャルテクノロジー」は、社会課題を解決できるような情報技術を意味する。具体的には、従来の人工知能(AI)では事前に用意したシナリオから少しニュアンスが違うだけでも回答できない場合があったのに対し、もっと柔軟な対応ができるAI(RI)や、防災や教育、高齢者や子育て支援などの社会課題を解決するためのAIの開発を目指すという。

同研究センターでは今回締結した協定に基づき、副センター長であり京都大学の黒橋禎夫教授が主導してLINEアプリを活用した社会課題手法を研究する。尼崎市と丹波市は、NIIとLINEの共同研究プロジェクトに自治体として初参画。市のホームページなど既存のサービスからの情報をベースに、RIを活用してLINEアプリ上で市民からの子育てや防災などの市政情報に関する問い合わせに対話型で即座に回答するシステムの開発を進める。さらに、問い合わせ傾向を解析して潜在的ニーズを把握し、住民サービスの向上や地域の活性化に役立つ新たなサービスに繋げていく。

例えば、市民が休日の戸籍の届出ができるかどうかを知りたい場合、LINEアプリ上でテキスト入力やスマートフォンの音声入力機能で「休みの日に戸籍の届けを出せますか」と問いかける。これを受けて、自動対話プログラムがユーザーの質問に対し、事前に用意したシナリオに基づきながら、ユーザーの意図を推定する技術を用い、ユーザーの質問とシナリオとの間の言葉のずれを吸収して回答を返す。従来から両市が行ってきた、一斉発信機能「LINE@」での市民への情報発信サービスは継続し、情報発信内容に関する問い合わせに対しても対話可能とする予定だという。

LINEアプリ上での利用方法については後日、尼崎市・丹波市のホームページや両市のLINE公式アカウントなどで詳細情報を掲載する予定。

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画像提供:NII