南北会談実現!世界はこう見た(2) 分断の痛み知るドイツとベトナムからの反応
わたしが生きているうちには実現できないだろう、と思っていたことが、現実のものになるかもしれない。北で逢った人々、南で逢った人々の顔が浮かぶ。みんな息を詰めて見守っているだろう。この気持ちを、ツイッター上で書くことは、自分の中でそぐわないので、これ以上は、言わない。祈る。
在日コリアンで、韓国だけでなく北朝鮮も訪れたことがある作家の柳美里さんは、南北会談が実現した4月27日、その思いをツイッター上でこのように綴った。
だれもが実現不可能だと考えたドイツ統一
「私が生きている間には実現はできないだろう」
多くの人々がそう思い、それでもなお願い続けていた、民族分断からの解放。29年前の1989年、その奇跡のような出来事がドイツでは起こった。東西ドイツを隔てていた「ベルリンの壁」の崩壊だ。
「我々ドイツ人は、(1つの民族が)長年の分断の後に再び対話を回復することがどういうことなのか、その意味をよく知っている」
南北会談があったこの日、米国訪問中だったドイツのメルケル首相は、会談実現の意義をそのように評価した。メルケル首相自身、共産主義体制の東ドイツで牧師の娘として育ち、ドイツ統一後に物理学者から政界に転身したという異色の経歴を持つ。分断の時代と統一を、身をもって経験してきた世代だ。メルケル首相は、「我々は目を覚まして、朝鮮半島に非核地域を実現できるように、非核化のためにともにまい進していかなければならない」とも述べた。
米国、国連も南北会談実現を祝福
かつて北朝鮮を「ならず者国家」呼ばわりし、挑発的な発言を繰り返してきた米国のトランプ大統領は、「朝鮮戦争は終わった!米国と偉大なる国民皆、朝鮮(半島)で今起きていることに非常に誇りを持つべきだ!」とのコメントをツイッター上で発信、世界を驚かせた。また5月末か6月初めに、北朝鮮の金正恩委員長との会合を実現する意思を示した。
国連広報担当官は、「アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日の真実に歴史的な会合に対して拍手を送っていた」「世界中の多くの人たちが、朝鮮半島の調和と平和を進めるために、2人の指導者が歩みを共にする力強い姿に感動した」と公式声明の中で述べている。
分断の傷癒えぬベトナム、平和を願うコメント
近年において朝鮮半島と同じく南北分断と戦争を経験した国が、アジアにもう1つある。4月30日に統一43周年を迎えたベトナムだ。今回の南北首脳会談のニュースに対しては、会談を歓迎し、朝鮮半島の平和を願うコメントが多く寄せられている。現地のトゥオイチェ(Tuổi trẻ)紙の28日付の解説記事に対しては、「1973年のパリ平和会議や1975年の統一が思い出される」といったコメントも寄せられている。一方で北朝鮮に対する懐疑的な意見もあり、自国の歴史と重ね合わせた複雑な思いを表すコメントも少なくない。「非党派」を掲げるオンラインメディア、ティエンザン(Tiếng Dân)に24日に掲載された記事では、後にそれぞれ南北ベトナムの最高指導者となるゴ・ディン・ジエムとホー・チ・ミンが、1946年にハノイで会って話した内容が綴られている。2人ともフランスからの独立を目指していたが、協力関係には至らなかった。「ホーチミンは北の主席になり、ゴ・ディン・ジエムは南の大統領になり、その後会うことがなかったのは残念だ。歴史に『もしも』はない。その後300~500万のベトナム人が死に、南北の傷跡は未だ癒えていない」と記している。
独元大統領が演説で述べた「新しい時」
第2次世界大戦後に世界各地でもたらされた民族の分断。「ベルリンの壁」が崩壊する前年、当時西ドイツ大統領だったリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー氏は、旧約聖書の出エジプトの顛末を引用して「時」についての演説を残している。「当時責任ある立場にいた父たちの世代が完全に交替し、新しい時が来るまでに40年が必要だった」と。
21世紀という新しい時代を迎え、最後の分断国家である韓国と北朝鮮が、軍事的ではなく平和的解決を模索して大きな一歩を踏み出した。終戦と分断から70年の時を経て、人類の受けた大きな傷が今、癒されようとしている。
執筆:平井明、沢木麻子、見市知
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