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雷雲中の「天然の加速器」が雷で壊れる 東大など国際グループが観測

雷雲中の「天然の加速器」が雷で壊れる 東大など国際グループが観測

東京大学、米ロスアラモス国立研究所、京都大学などの国際共同研究グループは、雷雲の中に存在する「天然の加速器」が、雷雲中を通過した雷によって破壊される現象が起こっていることを突き止めた。石川県珠洲すず市と富山湾に設置した検出器による雷雲と雷の観測結果から、明らかになった。

雷雲の中には、雷雲の強い電場で電子が光の速さに近い速度まで加速される「天然の加速器」といえる構造がある。この「加速器」で加速した電子が大気の分子に衝突すると、高エネルギーのガンマ線(放射線の一種)が放出されることがこれまでの研究で分かっている。雷は、放電の要因や雷雲ができる仕組みなど、まだ解明されていない部分が多く残されているが、この高エネルギー現象の研究が雷の発生メカニズムの解明につながると考えられている。

研究グループが注目したのは、天然の加速器がもたらす未解明現象の一つ「ロングバースト」だ。雷雲の通過に伴って高エネルギーのガンマ線が1分以上地上に降り注ぐ現象のことで、雷の放電と同時に途絶える様子が世界各地で観測されている。しかし、放電過程の一部分だけしか観測できておらず、途絶える要因は分かっていなかった。

研究グループは観測のため、能登半島の先端にある金沢大学能登学舎内の能登大気観測スーパーサイトに大気電場計と放射線検出器を設置。富山湾沿岸にも電波受信機を5台設置し、能登半島から富山湾にかけて広範囲で雷の現象を観測できるようにした。

2017年2月11日、雷雲が近づいたのを検知したと同時に、75秒間の「ロングバースト」を観測した。この時、能登学舎の西15km地点で雷放電が起こり、約0.3秒間、水平方向に70km進み、能登学舎の南東0.7km地点を通過。その時刻とロングバーストが途絶えた時刻が一致した。これは雷雲中の「天然の加速器」が、雷雲の中を水平方向に通過した雷によって壊されたことを示しているという。この観測で、ロングバーストが途絶える要因が、雷雲の中で起こった雷放電によるものと分かる瞬間を捉えることに成功した。

国際共同研究グループは、東大、米ロスアラモス国立研究所、京大のほか、東京学芸大学、神戸市立工業高等専門学校、近畿大学、カリフォルニア大学、名古屋大学、金沢大学で構成されている。

画像提供:名古屋大学