アルコール依存症になりやすい体質とは? 前編
中毒性があるというアルコール。お酒を好んで飲む人はたくさんいますが、生活の中での楽しみ程度にとどまる人と、それが病的なまでの量に増えて、社会生活に支障をきたすようになる人とでは、どこに境界線があるのでしょうか? 今回は、アルコール依存症になりやすい体質、注意信号について解説いただきます。
解説:垣渕洋一 成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター長 専門:臨床精神医学(特に依存症、気分障害)、産業精神保健 資格:医学博士 日本精神神経学会認定専門医 |
遺伝的に決まっているアルコールへの耐性
アルコール依存症になりやすい体質は、「肝臓でのアルコールの分解能力」と「アルコールに対する耐性・依存性のできやすさ」の2つで決まります。
アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドは酢酸に、さらに水と二酸化炭素に分解されて体外に排出されます。分解は肝臓にある酵素の助けを借りて行うので、酵素の活性が低いと分解能力も低いのです。この中で、アセトアルデヒドは臓器毒性が強く、これが少しでも溜まると顔面紅潮、吐気、頭痛、動悸、冷汗といった不快な症状が起きます。そして、アセトアルデヒドを分解する酵素(アセトアルデヒド脱水素酵素)の能力を「活性」と呼び、この能力の強度は遺伝的に決まっています。
日本人は「アルコールに強い」活性型が50%
「活性」の強度は3通りに分類され、活性型(活性が強い)、不活型(活性が弱い)、失活型(活性がゼロ)があります。日本人をはじめとするモンゴロイドは、活性型が50%、不活型が40%、失活型が10%ぐらいです。失活型の人は少量でも前述の症状が出るので、お酒をまったく飲めません。このため、アルコール依存症になるリスクもゼロです。活性型はいわゆる「お酒に強い人」で、大量に飲酒できる分、依存症のリスクも高いです。不活型の人は、飲酒習慣を始めた当初は少し多めに飲んだだけで前述した不快な症状が出るのですが、我慢して飲酒を続けるうちに酵素の活性が上がってきて、大量飲酒ができるようになる人もいます。このため、依存症になるリスクはあります。ちなみにガンは、不活型の人が我慢して飲酒を続けた場合に、発症するリスクが一番高くなります。最も大量のアセトアルデヒドに臓器が攻撃されるからです。
また、アルコールに対する耐性・依存性に陥りやすいかどうかには、性差があります。同じペースで飲み続けると、平均して女性は男性の半分の期間で依存症になるとされています。依存症についてお話をする中で「毎日、自分より大量に飲んでいる人が周囲に何人もいるのに、なぜその人たちは依存症にならないのか?」という質問を受けることがあります。依存症のなりやすさに個人差があることは確かなのですが、それを決める遺伝子はまだ見つかっていません。
(写真はイメージ)
参考記事
アルコールとの正しい付き合い方 ~「酔い」の4段階を知ろう!【前編】(2018/04/27)
アルコール依存症の実態とは? TOKIO山口達也の飲酒めぐって注目。専門家「まずスクリーニングテストを」(HUFFPOST)