大腸がんの細菌は口の中に由来 新たな治療・予防法への一助に
横浜市立大学と協同乳業の共同研究グループは、大腸がん患者のだ液と大腸がん患部の組織に同じ細菌の菌株が存在することを発見し、大腸がんの細菌は口の中の菌に由来していることを示す研究結果が得られたと発表した。この発見が、大腸がんの治療や予防における新たな指標づくりにつながることが期待されるという。
この研究成果は、英国消化器病学会(British Society of Gastroenterology)の2018年6月22日付オンライン機関誌「Gut」に掲載された。
大腸がんは、国立がん研究センターの部位別がん患者数予測によると、男女合計で1位、部位別がん死亡数予測では男女合計2位に相当する疾患となっている。
横浜市立大学と協同乳業の共同研究グループは、フソバクテリウム・ヌクレアタム(F.ヌクレアタム)という菌に着目。この菌が大腸がんの症状に悪影響を及ぼすという報告例が2012年以降に増加傾向となっていたが、これまで人の腸内からこの菌が検出されることは少なく、菌の感染経路は分かっていなかった。
同研究グループは、この細菌が口の中に由来するという仮説のもと、大腸がん患者14名を対象に検査を実施。患者の唾液と、内視鏡を使って採取した大腸がん患部の組織からF.ヌクレアタム細菌を分離した。こうして得られた1351株について解析した結果、8人の患者から、口の中と大腸がん組織の双方でこの細菌が検出されたという。また、この8人中6人、つまり75%のF.ヌクレアタムの検体から、口の中と大腸がん組織の双方で同じ菌株が検出された。これは全被験者の43%に相当する。この結果は、大腸がんのF.ヌクレアタム菌が口の中から来たものであることを示唆するものだという。
現時点ではこの菌が口の中に入るまでの感染ルートは分かっていないが、今回の研究結果が今後、大腸がんの手軽な診断法の開発や、大腸がんの治療や予防につながることが期待される。
画像提供:先端医科学研究センター(冒頭の写真はイメージ)