SDGs 国内の取り組みと課題【ニュースのコトバ解説】
SDGs(持続可能な開発目標)が日本でも広がりを見せており、2018年は「SGDs実装元年」になるとも言われています。SDGs推進のためには企業の取り組みが不可欠ですが、欧米の企業に比べて日本では浸透が遅く、実質的な参画はまだこれからです。昨今は外見上関係のありそうなCSR(企業の社会的責任)の体系や取り組みをSDGsに紐づけるだけの事例も出てきており、このようなうわべだけSDGsに取り組んでいるように見せかけることを欧米では「SDGsウォッシュ」と呼んでいます。SDGsウォッシュに陥らないため、企業はSDGsの本質と狙いを理解して取り組んでいくことが求められています。
今回はSDGsとは何か、現状どのような取り組みが行なわれているのかを、国の動向や企業の取り組みを見ながら理解を深めようと思います。
世界のビジネスで注目の集まる「SDGs」
SDGsは、2015年に国連総会で採択された地球環境や人々の暮らしなどを持続可能とするための行動計画で、2030年までに国連加盟国が目指すべき共通の目標のことです。「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、読みは「エスディージーズ」。「誰も置き去りにしない(leaving no one left behind)」を共通の理念としており、貧困や気候変動、環境問題への対策など17の目標と、それを具体化した169のターゲットで構成されます。これらの達成によってもたらされる市場機会は年間約12兆ドル、さらに2030年までに世界で創出される雇用は約3億8000万人と言われています。
進む日本の取り組み
日本では昨年12月に総理大臣官邸で「ジャパンSDGsアワード」の表彰式が初めて執り行われたり、国の環境政策の指針となる環境基本計画が6年ぶりに改定され、SDGsと地球温暖化対策の「パリ協定」に対応することを打ち出したりしています。日本経済団体連合会は昨年、企業が守るべき指針を記した「企業行動憲章」を7年ぶりに改定し、企業にとって最も大切な経営理念にSDGsを取り入れ、事業を通じて地球規模の課題解決に寄与することを呼びかけています。
企業でも具体的な取り組みが進むが…
損害保険ジャパン日本興亜は、気温や風量などにおいて天候が不順の場合に保険金額を支払う「天候インデックス保険」を提供し、気候変動の影響を受けやすい発展途上国の営農を支援しています。これまでタイやフィリピン、ミャンマーといった東南アジアで提供し、堅調に契約を伸ばしています。パナソニックは電力インフラの整備が不十分なインドネシアやケニア、ミャンマーの3カ国に電力を手軽に生み出せる太陽光発電のシステムを提供するほか、電力に関わる技術者の育成を支援するプロジェクトを始動しています。今後、提供地域を拡大していく予定です。住友商事は、SDGsを踏まえ事業活動を通じて解決する課題を6つ設定し、今後の事業戦略の策定や個々のビジネスの意思決定をする際の重要な要素として位置づけました。実質的な取り組みや成果はまだなく、今後の動きに注目されます。
このように、日本ではまだ取り組みが始まったばかりで成果はこれから、という段階です。SDGsはあくまで社会が目指すべきゴールを示したもので、企業に求められるのは事業を通してゴールを達成していくこと。実際の成果がないままSDGsに関連付けて企業活動を説明するのではなく、SDGsを新たなビジネス展開や利益拡大の機会と認識し、本業を通じて社会貢献をする「経済」と「社会貢献」の両立が成されていくことを願うばかりです。
画像提供:国際連合広報センター