CO2の増加により海洋生態系の多様化が減少 

CO2シープで海洋酸性化問題予測

筑波大学下田臨海実験センター、プリマス大学、パレルモ大学の国際研究グループは7月30日、海底から二酸化炭素CO2が噴出している場所である「CO2シープ」を利用して、海洋酸性化が生物群集の激変を引き起こしていることを明らかにした。今後、CO2シープの使用で、酸性化が進行した未来の海を模した生態系の予測が可能となる。同研究は電子ジャーナル「Scientific Reports」に7月27日付で掲載された。

大気に放出されたCO2は一部が海に吸収され、その結果として海の酸性化が引き起こされている。この問題は海洋酸性化と呼ばれており、近年、海洋生態系が今後どのように変化するのか、世界中で注目されている。

同研究グループは、伊豆諸島の式根島において発見された新たなCO2シープ周辺での生物調査を実施。式根島周辺の平均的なCO2濃度は約300μatm(*注参照) と世界的に見ても低く、産業革命前後と同等のCO2濃度だった。一方、CO2シープ付近は400μatmを超える高いCO2濃度となっており、現在のCO2濃度と同等だった。この2つの海域の調査により、過去100年間の海洋酸性化の影響をあきらかにし、生物多様性がどのように変化したのかを調べることに成功。今回は、この2つのCO2濃度下における生物群集を調査したが、その結果、CO2シープから離れた海域(CO2濃度300μatm)ではサンゴや大型の海藻が他の生物のすみかとなり高い生物多様性が維持されていたことがわかった。しかし、400μatmの海域では、サンゴや大型の海藻が減少し、小型の藻類などが優先して繁殖していた。またべつの高CO2環境下(900‐1500μatm)では小型藻類によって海底面が覆われていた。

これらの結果から、海洋の酸性化が進むとサンゴ礁や大型の海藻が減ると同時に、それらをすみかにしていた生物も減少し、生物多様性が失われると考えられる。

同グループは高CO2濃度下での海洋生態系の変化の甚大さについて触れ、「少なくともパリ協定に基づいたCO2削減を進めることが必須」だと言及している。

*μatm:100万分の1気圧

(写真はイメージ)