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10代が陥りやすい「ゲーム依存症」はなぜ危険なのか? 前編

10代が陥りやすい「ゲーム依存症」はなぜ危険なのか? 中編

前編では、ゲーム依存症が特に10代の子どもたちが陥りやすいことの恐ろしさについて説明しました。今回は、そもそも娯楽として作られたはずのゲームをただ楽しむことと、依存症になってしまうことのボーダーラインがどこにあるのかと、「ゲーム依存症」という概念が生まれた背景を見ていきます。

解説:垣渕洋一
成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター長
専門:臨床精神医学(特に依存症、気分障害)、産業精神保健
資格:医学博士 日本精神神経学会認定専門医
ゲーム障害になるボーダーラインはどこか?

2018年6月、WHOの専門部会は、国際疾患分類(ICD)の第11版を発表しました。その中で、10版までにはなかった「ゲーム依存」という疾患が追加されました(表1)

表1
10代が陥りやすい「ゲーム依存症」はなぜ危険なのか? 中編

問題の発生する順番には、ある程度のパターンがあり、典型的なパターンとしては、以下のようなものが挙げられます。

(1)ゲームをしている時間が段々と長くなり、寝る時間を惜しんで夜中にもゲームをするようになる。
(2)昼夜が逆転するため、朝起床できず、遅刻・欠席・欠勤が増えるようになる。登校・出勤しても、授業や仕事に集中できないので成績が低下する。
(3)ゲームを控えるように周りから注意されても直らず、同じことを繰り返して、やがて周囲との関係が悪化する。
(4)子どもの場合、親が注意を繰り返すと暴言、暴力、器物破損などを起こす。
(5)重度になると退学、退職に至る。

ゲーム依存症には、「週に3日遅刻したら駄目」といった詳細な診断基準は定められておらず、グレーゾーンが広いのですが、どこかでボーダーラインを引く必要があります。私見では、「問題が顕在化していなくても、なんだかんだ理屈をつけて、ゲームをする時間が長くなりはじめたら、依存症が発症している」と考えます。

ゲーム依存症はネット時代の産物

ゲーム依存の98~99%は、オンラインゲームが原因と報告されています。高速インターネット環境が整い、魅力的なオンラインゲームが競って提供されるようになると、同時にこれが社会問題になり始めました。世界の中でもゲーム依存に関する問題が早くから顕在化したのは韓国ですが、韓国では1999年、政府主導によるインターネット普及政策によって全国のブロードバンド化が推し進められ、3年でインターネット先進国に躍り出た背景がありました。そしてこれと平行して、オンラインゲームのやり過ぎによると見られる死亡事件や自殺などが、1998年頃から起きるようになりました。2004年、韓国政府の女性家族部(女性の地位向上および家族政策を担う行政機関)が、ネット依存に対する取り組みを開始。2005年には韓国で、オンラインゲームをやり続けた少年が突然死するという事件が世界中で報道され、日本でも社会問題として認識されるようになりました。同年、韓国では国家青少年保護委員会が設立され、4カ所の大学病院が分担して、重複障害の治療、個人精神療法、集団療法、家族療法などの治療モデルを構築するようになりました。日本では2011年に久里浜医療センターにネット依存の研究部門が設置され、外来治療が始まりました。その後、徐々に治療を行う医療機関が増えています。

(後編に続く)

(写真はイメージ)