ミントの香りで害虫予防と防御力アップ 新しい無農薬・減農薬栽培技術
東京理科大学の有村源一郎准教授らは、ダイズやコマツナがミントの香りにさらされると、害虫への防御力が高められることを実証。この現象を活用することで無農薬・減農薬の栽培が可能になることを明らかにした。この研究成果は英科学誌『ザ・プラント・ジャーナル』に8月29日付けでオンライン掲載された。
害虫被害で生じる「植物間コミュニケーション」
植物は、他の植物が害虫に食べられた時に放出する香りを、信号として受け取ることができ、これは「植物間コミュニケーション」と呼ばれている。害虫に食べられた植物の周囲にある、まだ被害を受けていない植物が、この香りから害虫の脅威を察し、予め防御力を高めることができるというもの。一方、ミントの香りには害虫忌避効果があるが、この香りにも同様の植物間コミュニケーションを生じさせる能力があるかどうかは、これまで解明されていなかった。
ミントの香りが植物の防御力を高める
このたび、10種のミントのそばで育てたダイズ葉の防御遺伝子の発現量を調べたところ、キャンディミントとペパーミントの香りにさらされた場合に、この発現量が高くなることが分かった。この効果はミントの香りにさらされてから数日後まで維持され、そのメカニズムは後天的に決定される遺伝的な仕組み(エピジェネティクス)によるものだった。これは、野外でキャンディミントの近くにダイズを育てた場合でも、温室内でミントの香りにさらされたダイズを野外に移した場合でも同様に認められた。さらに、ペパーミントの香りにさらされたコマツナにもこの効果が認められ、特定のミント種は周囲の栽培植物の潜在的な防御力を向上させる「コンパニオン植物」として機能することが明らかとなった。
ミントを活用した栽培技術向上に期待
今回の研究で、ミントから1m以内でダイズやコマツナを栽培すると、害虫に対する被害率は半分に減少したため、ミントを混栽することで、「害虫忌避」と「栽培植物の防御力向上」という相乗効果が得られ、無農薬・減農薬での栽培が期待できることが明らかになった。
また、極低濃度の農薬を用いた減農薬栽培とミントを併用することで、新しい有機栽培技術を生み出すことも可能になる。さらに、ミントの香りにさらされた栽培種では、さまざまな健康促進代謝物(二次代謝化合物)の生産が向上する可能性があり、生産物に付加価値が生じる可能性も秘めている。現在、このミントを用いた栽培技術を活用した、理科大ブランドのダイズやコマツナの開発が進められているという。
(写真はイメージ)