開花を誘導する遺伝子は朝働く 開花メカニズム解明
横浜市立大学の清水健太郎客員教授のグループは、植物の開花を誘導する鍵であるフロリゲンFT遺伝子が朝に機能していることを発見した。今まで実験室内での栽培では「フロリゲンFT遺伝子は夕方に機能する」との結果が得られていたが、今回、野外環境においての実験でこのことが明らかになった。
今回の発見は横浜市立大学木原生物学研究所の清水健太郎客員教授グループと米国ワシントン大学、スイス・チューリッヒ大学との多国間国際共同研究によるもの。これまで開花の分子機構については、モデル植物のシロイヌナズナを用いて実験室内の植物栽培装置によって分析されており、その条件下では「フロリゲンFT遺伝子は夕方に発現する」ということが確認されていた。この方法の場合、栽培条件が安定しており実験における再現性が高くなるため、全世界の研究室でこの方法が用いられていた。しかし、今回シロイヌナズナを実際に野外で育ててフロリゲンFT遺伝子の発現を調べたところ、夕方ではなく朝に最も遺伝子が機能していることが分かった。これにより、植物の開花に鍵となる遺伝子が機能するタイミングが判明したと同時に、現在世界中で用いられている研究室内の栽培条件が、野外の実際条件を正確に反映していないことも明らかになった。
植物の開花時期は穀物や果実の収量に直接影響するため、作物の品種改良において重要な情報を担っている。フロリゲンFT遺伝子は、活性化することにより開花を誘導するフロリゲンを作り、これによって開花が始まることが知られている。今回の研究成果により、野外環境を反映させた実験環境を用いて遺伝子機能を解析し、正確な開花・収穫時期の制御を実現できることが期待される。
(写真はイメージ)