被ばく量測定、少量の血液で可能に 東北大など放射線災害向け実現に期待
東北大学をはじめとする研究グループは1日、血液中の有害な活性酸素を消す能力(抗酸化能)をわずかな量の血液で測定できる技術を開発したと発表した。血液の抗酸化能は被ばくした放射線量と関係があると考えられており、放射線災害時に患者に施す治療の優先度の決定や、健康被害の評価がしやすくなることが期待される。
放射線を取り扱う仕事に従事する作業者は、被ばく線量計を身に着けて被ばく放射線量を測っている。しかし、一般市民が被ばくしてしまうような放射線災害が起こった場合、一般市民は線量計を持っていないため、線量計を使わずに被ばく量を推定する方法が求められていた。
東北大学をはじめとする研究グループは、体内の物質を傷つける有害な活性酸素などを消す能力「抗酸化能」と、被ばくした放射線量の関係に注目。わずか100μl(μ=マイクロは100万分の1)の血液から、血液中の抗酸化能を測定できる「i-STrap法」という技術を独自に開発した。
マウスを使った実験では、放射線を少量照射した場合と2~3倍程度の照射量の場合でそれぞれ抗酸化能がどのように変化するかを測定した。照射量が少なかった場合、2日後まで抗酸化能が下がって1週間後まで低い状態が続き、24日後までには照射前の状態に戻っていた。一方、照射量が大きかった場合、7~10日後まで抗酸化能が下がり、少なくとも24日後までは抗酸化能が低い状態が続いた。これらの結果から、放射線の被ばく量によって、被ばく後の血液中の抗酸化能に違いがあることが分かり、また今回開発した技術によって被ばく量が推定できることも検証できた。
研究グループは今は、放射線被ばくによって抗酸化能が低下するメカニズムの解明や、人に適用する場合に個人差による影響について研究を進め、より高感度な手法の開発を目指すとしている。