歯が少ないことで睡眠リスク、高齢者の健康に影響
東北大学大学院歯学研究科は5日、歯が少ない高齢者は長時間睡眠または短時間睡眠のリスクが高いと発表した。より多くの歯を残せるよう歯の健康を保つことが、適切な睡眠の維持につながる可能性があるという。論文は8月10日に、睡眠医学の国際科学雑誌『スリープ・メディスン』電子版に掲載された。
高齢者にとって、睡眠時間は短すぎても長すぎても、死亡率が上昇するなどの影響があることが知られている。一方で、歯は噛み合わせを保つ役割も担っており、歯が0本の人では下顎が上方に回転し、気道に影響を与えて睡眠時の呼吸を妨げている可能性があると言われている。これまで高齢者で歯の本数と睡眠時間の関係を調べた研究はなかったため、その関連について検証した。
その結果、歯が20本以上ある人に比べ、歯が0本の人では4時間以下の短時間睡眠のリスクが1.4倍、10時間以上の長時間睡眠のリスクは1.8倍と、「U字型」の関係が統計的に有意に認められた。同様に歯が1~9本しか残ってない人でも、短時間睡眠のリスクが1.3倍、長時間睡眠のリスクは1.5倍高かった。このことから、より多くの歯を残せるように歯の健康を保つことが適切な睡眠時間の維持、ひいては健康長寿につながると考えられる。
今回の研究は、日本福祉大学健康社会研究センターが、65歳以上を対象に実施した日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)の2010年度のデータを使用。睡眠時間の質問は無作為に2万3444人に対して行われ、その中の2万548人(平均年齢73.7歳)から回答を得た。睡眠時間を1時間ごと4~10時間の7つに区分けし、現在の歯の本数が20本以上、10~19本、1~9本、0本の4つの区分けとの対応について、睡眠時間7時間を基準に歯の本数と短時間睡眠または長時間睡眠の関連について分析した。
画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)