魚をほとんど食べない人の大動脈疾患死亡リスク、約2倍に

魚をほとんど食べない人の大動脈疾患死亡リスク、約2倍に

国立がん研究センターと筑波大学の研究グループは15日、魚をほとんど食べない人の大動脈疾患による死亡リスクは、週に1~2回食べる人に比べて約2倍になると発表した。魚摂取と大動脈疾患死亡との関連を疫学的に示したのは初めてという。論文は、欧州専門誌『クリニカル・ニュートリション』のオンライン版に8月14日付で公開された。

大動脈瘤や大動脈解離といった「大動脈疾患」は、かつては日本での死亡率はそれほど高くなかったが、高齢化に伴って近年増えつつある。大動脈瘤が破裂したり、大動脈が裂けたりすると、医療が進んだ現代においても死に至る場合が多い。この病気は主に動脈硬化から進行するため、心筋梗塞と同様に魚の摂取が予防につながると考えられてきたが、科学的な裏付けはほとんどなかった。

今回、日本の8つの大規模コホート研究(追跡観察)から36万人以上を統合した解析を行い、食習慣アンケート調査結果から魚摂取頻度を「ほとんど食べない」「月1~2回」「週1~2回」「週3~4回」「ほとんど毎日」の5つの群に分けた。循環器疾患の主なリスク要因を統計学的に調整した上で、ほとんど食べない群に対する他の群の大動脈疾患死亡リスクを算出した。その結果、魚を週1~2回食べる群と比べ、ほとんど食べない群では、大動脈解離で死亡するリスクが2.5倍、大動脈瘤が2.0倍、これらをあわせた大動脈疾患全体では1.9倍高く、統計学的に有意にリスクが高かった。一方、月に1~2回食べる群は、週1~2回食べる群と比べて大動脈解離で死亡するリスクは1.2倍、大動脈瘤は1.9倍、大動脈疾患全体では1.1倍だったが、統計学的に有意と言えるほどではなかった。週3~4回食べる群、ほとんど毎日食べる群でも、リスクの大きさは統計学的に有意と言えるほどではなかった。

この研究から、魚をほとんど食べない場合に大動脈疾患で死亡するリスクが有意に上がり、魚を少なくとも月に1~2回食べていれば大動脈疾患で死亡するリスクは高くならないことがわかった。なお、魚をたくさん摂取すれば心筋梗塞のリスクが低下することがわかっているため、魚の摂取が極端に少なくならないよう気をつけるだけでなく、より多く摂取していくことが循環器疾患予防につながると考えられる。

(写真はイメージ)