キハダマグロ、卵から幼魚まで飼育成功 完全養殖を目指す
近畿大学は24日、世界で初めてキハダマグロを卵から幼魚まで飼育することに成功したと発表した。同大学の澤田好史教授らが、科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)の支援を受け、パナマ共和国水産資源庁(ARAP)および全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)との国際共同研究で得た成果。2002年にクロマグロの完全養殖に成功した近畿大学の技術を応用した。
4月21日、パナマ共和国にあるIATTCアチョチネス研究所の陸上水槽で飼育中のキハダマグロの親魚から7万3080粒の受精卵を得て、飼育を開始。
6月12日(ふ化後52日)、人工ふ化させ育てた稚魚238匹(全長9~13cm)を同研究所沖合いの海面に浮かべたいけすに移した。
7月8日(ふ化後78日)、いけすで生存していた幼魚68匹(同平均18.7cm)を再び陸上に移し、大型水槽での飼育を開始。
8月30日(ふ化後131日)、2年後の産卵、完全養殖達成を目指して、沖合いに出さずに陸上水槽で飼育していたキハダ幼魚と合わせ、大型陸上水槽で幼魚18匹(同約30cm)の飼育を継続中。
配合飼料やその給餌方法、波の荒い海域でのいけすの維持方法などの工夫、いけすに余計な生物が付着しないようにする努力などにより、卵から幼魚までの飼育に成功した。しかし、海面のいけすでは荒天や海鳥による食害などが生存数を大きく減らした原因と考えられる。日本とは異なる気象・海象、十分とはいえない飼育施設、相手国研究者や技術者の飼育の不慣れさを、近畿大学の専門家と相手国研究者とのチームワークで克服し、完全養殖によるキハダマグロの市場供給を目指している。
陸上水槽で人工ふ化し育てられたキハダ稚魚。収穫されて海面いけすへ移される様子。
パナマ共和国アチョチネス沖合の海面に設置されたキハダ稚魚・幼魚飼用いけす。いけすの直径は20m。中央に見えるのは配合飼料を給餌する自動給餌機の架台。同国でのマグロ海面飼育はこれが初めて。
海面いけすでの飼育が終わり、再び陸上水槽に運ばれて飼育されているキハダ幼魚。全長約30cm。写真は水槽壁面に衝突死した個体。
画像提供:科学技術振興機構(JST)