日本人の協調性のルーツは「地域活動」 京大が実証
京都大学こころの未来研究センターの内田由紀子准教授らの研究グループは2日、日本社会の特徴とされる「協調性」が農業地域全体で高いことを解明。その原因の一つに「地域活動」への高い参加率があることを実証した。この研究成果は同日、米国の学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」のオンライン版に掲載された。
同研究グループは西日本の農業地域、漁業地域、それ以外の地域からサンプリングされた408集落7295人を対象に住民調査を実施。その結果、農業地域(非農業者を含む)は、他の地域に比べて協調性が高いということが分かった。ここでいう協調性とは、他者からの評価を気にかけたり調和を重視する性質のこと。この原因として、同グループは農業地域ではほかの地域に比べて、お祭り・自治会活動・冠婚葬祭など「地域活動」への参加率が高く、この参加率の高さが協調性を促進していることを示した。その背景として、農業地域、特に水田稲作では歴史的に大規模な協力関係が必要とされてきたことを挙げ、これが地域の伝統となり、現代にも受け継がれてきたと考えられるという。
今まで日本の協調性の高さのルーツは農業にあると先行研究によって示唆されていたが、農業に従事することではなく、農業地域に住むこと、そして地域活動に参加することによって協調性が促進されるということを実証したのは初めて。
この結果は今後、文化心理学研究の理論や方法について新たな知見を与えられると考えられる。今後は集合活動がもたらす影響について、地域の中の幸福感など別の側面からも検証を続けていくという。
(写真はイメージ)