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混雑原因を行動シミュレーションで分析、必要な混雑緩和策を提案

混雑原因を行動シミュレーションで分析、必要な混雑緩和策を提案

富士通研究所と早稲田大学の高橋真吾教授は、混雑の原因を自動分析する技術を開発した。従来数カ月かかっていた分析時間を数分に短縮できるほか、原因を網羅的に発見できるため、空港での実験では従来の手法と比べ4倍の原因を発見した。今後、さまざまな人の属性や行動パターンに合わせた混雑緩和策が可能になるという。

イベント会場や空港、ショッピングモールなど、人が多く集まる場所では、混雑による顧客満足度や売上の低下が問題となる。現状では、入退場や支払いなどへの設備・対応人員の増強や、案内板の設置、クーポン配布による空いている場所や時間への誘導などで混雑の緩和が図られている。効果的な対策をとるために、人々の属性や認知、行動を表現したモデルを構築し、混雑状況を仮想的にシミュレーションする手法が用いられているが、現状の手法では、専門家が大量のシミュレーション結果について原因を一つずつ分析して対策の仮説を立て、再度シミュレーションにかけて検証する必要があった。これは数カ月単位の時間がかかる上、原因の見落としで有効な対策をとれない場合があるといった問題があった。数千~数万人がそれぞれにとった行動や経路の結果を羅列していたために計算量が膨大になっていた。

そこで、ある程度共通要素が含まれる項目を「属性」「認知」「行動」の観点からグループ化し、それぞれの特徴で分類することで組み合せパターンを減少させた。これにより、ある部分で発生した混雑の原因を探りたい場合に、どのような属性の人々に対して、どのような認知や行動を変化させる施策が有効であるかといった、施策に直結する原因を網羅的に発見することが可能になったという。実際、空港の混雑緩和施策分析を目的として2015年に開発した人間行動シミュレーションにこの技術を適用したところ、専門家の分析と比較して、約4倍の混雑原因を発見できたという。

たとえば保安検査の混雑分析では、旅客が特定のチェックインカウンターで滞留することによって保安検査の突発的な混雑が生じることを新たに見出した。この技術によって発見された混雑原因に基づいて対策をとったところ、専門家の分析結果で行った対策に比べて、保安検査の待ち人数を6分の1に削減することが可能となり、施策実施に必要な人数も3分の2に抑える効果があることをシミュレーション上で確認できた。また、分析にかかる時間も数カ月から数分へと大幅短縮できたという。

今後は、この技術を用いて、イベント会場や空港、ショッピングモールなどでの混雑に対し実証を進め、デジタルサイネージやテナント配置などの効果も含めて検証していくという。また、混雑の将来予測ソリューションの早期提供を目指すという。混雑に限らず、人間行動を含む社会・市場・組織における複雑な現象を分析し、問題解決を図るためのシミュレーション技法の確立を目指していくという。

(写真はイメージ)