石油由来ではない紫外線カットフィルム開発 ビニールハウスなどに活用
産業技術総合研究所(以下、産総研)と森林研究・整備機構 森林総合研究所(以下、森林総研)は19日、植物と鉱物だけからなる透明で透湿性に優れた紫外線カットフィルムを共同で開発したと発表した。石油由来の成分を原料として使用していない透湿性に優れた素材は今まで例がなかったため、環境負荷の少ない素材としてビニールハウスなどへの利用が期待される。
近年、温暖化による気温上昇により、病害虫の活動が活発化しており、農作物への被害拡大が懸念されている。農業分野で作物への被害を及ぼす病害虫は紫外線への走行性を持つため、病害虫の侵入を防ぐ紫外線カットフィルムは、ビニールハウスやマルチフィルムなどの農業用被覆資材に欠かせない素材だ。
産総研は2003年から、粘土を主成分とする膜材料で、不燃性、耐熱性、ガスバリア性などを特徴とする「クレースト®」の開発、実用化に取り組んできた。また森林総研は、耐熱性や紫外線吸収性を持つ植物由来の高分子であるリグニンの新たな抽出法の開発や、得られたリグニンを使った機能材料の開発に取り組んでいた。今回は、クレースト®とリグニンを合わせて、環境負荷の低い農業用被覆資材の開発に取り組んだ。
クレースト®は紫外線吸収性を持たないため、紫外線を吸収する性質を持つリグニンから抽出されるリグニンナノ粒子を、クレースト®の主成分である粘土と混合。その後、製膜し、リグニン由来の紫外線吸収と、粘土由来の透湿性を併せ持つリグノクレーストを作り出した。リグノクレーストは従来よりも高い紫外線吸収性を持つため、病害虫を寄せ付けない紫外線カットフィルムとしてメリットがある。また、植物・鉱物由来の成分からできているため、使用後はそのまま土にすき込み処分ができ、作業コストの低減や効率化が期待される。
今後は、リグノクレーストの広範な性能評価試験を行いながら、農業用被覆材などの製品化を目指す。
(写真はイメージ)