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「#MeToo」時代のセクハラ問題を考える(3) 性暴力という犯罪への正しい対処法

「#MeToo」時代のセクハラ問題を考える(3) 性暴力という犯罪への正しい対処法

性的被害に遭うことは、その人の尊厳が踏みにじられることであり、心身ともに受けるダメージがあります。今回は性的被害に遭った場合に、まず何を心がけなければいけないのか、性的被害者にどのような支援やケアが必要とされているのかを見ていきます。
 

山田ゆり
臨床心理士、20年以上にわたって、病院や教育機関で心理療法を行っている。性暴力被害や、DV, 子どもの頃の虐待などのトラウマ経験を持つクライエントの治療に携わっている。

 

―性被害に遭った人がまず、早急に行なうべきことは何でしょうか?

まず理解しなければならないのは、性的被害に遭った人はショック状態にあり、このような出来事をできるならば忘れたい、知られたくないという心理がはたらくということです。しかしそのことによって治療や支援を受ける機会を逸するのだとしたら、それは大きな問題です。まず強姦された場合、身体的な問題として性感染症や妊娠の問題があります。HIV感染が放置されれば死に至ることもあり、望まない妊娠・人工中絶・出産という大きなリスクも発生します。早期に婦人科で治療を受けることによって、これらの問題を防ぐことができ、例えば緊急避妊薬(ノルレボ®など)を72時間以内に服用することで妊娠を防ぐことができます。そのためには早く婦人科を受診することが不可欠です。
 

―性的被害を受けたことは犯罪被害に遭ったことですから、警察に届け出なければなりません。

性的被害に遭った人たちがその心理状態のゆえに、適切な治療や支援を受ける機会を逸してしまうことがあるのと同様に、警察への届け出も躊躇してしまう場合が多くあります。最初は警察に届け出ることを躊躇したものの、後で「加害者を逮捕してほしい」と思ったとき、証拠が手元にないというようなことも起こります。こういったケースに対して、現在日本でもようやく、性暴力被害者に特化した「ワンストップ支援センター」ができるようになりました。現在日本では、44の機関があります(参考:内閣府男女共同参画局HP 女性応援ポータルサイト)。機関にもよりますが、24時間の電話相談(匿名でも可)、婦人科と連携しての証拠採取(警察で使用するレイプ証拠採取キットを所有)、警察や病院への付き添い、カウンセリング等を行っています。直接警察に行くことに抵抗感がある人には、こちらのセンターに相談することをおすすめします。もちろん、伊藤詩織さんが指摘したように、欧米諸国に比べて数は圧倒的に不足しており、そのためこれらの機関が必ずしも理想的に機能していない実情もありますが、それでも以前に比べれば少しずつ進んできていると言えます。
 

―警察ではどのような対応をしてもらえるのでしょうか?

警察には犯罪被害相談の窓口があり、警察に届け出ることによって婦人科での診断や検査、治療、証拠採取、人工妊娠中絶などの費用が公費負担される制度があります。このような相談窓口は警察に所属する臨床心理士が対応している場合も多く、警察署に直接行くよりは敷居が低いかもしれません。あまり知られていないようですが、警察では「性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103(ハートさん)」を用意しており、こちらにかけると所属の警察の相談窓口につながります。また、性犯罪被害に特化してはいませんが、全国の都道府県に民間の犯罪被害者支援センター(全国犯罪被害者ネットワークなど)があり、そこでも婦人科の紹介や病院や警察への付き添い、特に司法手続きの支援を行っています。ここでも匿名での電話相談が可能です。

しかし警察に届け出た場合、加害者逮捕のための様々な手続きが必要になり、この中には例えば、事情聴取や実況見分も含まれます。事情聴取では被害の詳細を話さなければならないため、これは被害者本人にとって、非常につらいものであることは想像に難くありません。次回は、事情聴取の現場がどのようになっているのか、また今後の課題は何かについて説明したいと思います。

(次回に続く)
(写真はイメージ)
 

【参考記事】
「#MeToo」時代のセクハラ問題を考える(1) 性被害者はなぜ非難されるのか?(2018/09/17)
「#MeToo」時代のセクハラ問題を考える(2) 性被害者が受ける二重の苦しみ(2018/09/24)