メタボの根源「肥満」に薬理学的アプローチ 骨に含まれるGluOCに鍵
福岡歯科大学の大谷崇仁助教らは、骨に含まれるたんぱく質の1つが脂肪細胞を間引きするように減少させ、生き残った脂肪細胞は代謝活性が高くなると発表した。メタボリックシンドロームを引き起こす「肥満」に対する新たな薬理学的アプローチとなる可能性を秘めているという。英国のオンライン科学雑誌『セル・デス&デシーズ』電子版に、12月13日付で掲載された。
骨は身体を支持して運動機能を担うとともに、造血やミネラルの貯蔵庫としても重要な器官だ。それに加え、最近の研究で骨には全身の糖や脂質の代謝を活性化する内分泌機能があることが分かってきた。この機能を担っているのが骨の中に含まれるたんぱく質の1つ、オステオカルシン(OC)だ。このOCの一部でホルモンの機能を持つものが、GluOCと呼ばれる。
GluOCの効果を検証した結果、低濃度では脂肪細胞において糖や脂質の代謝を活性化するホルモンであるアディポネクチンの発現を促す効果があることが分かった。一方、高濃度では逆にアディポネクチンの分泌量が低下し、約3割の脂肪細胞が細胞死した。この細胞死を解析する中で、GluOCが作用した脂肪細胞に隣接する脂肪細胞が細胞死することが発見された。つまりGluOCが作用すると、脂肪細胞の一部では代謝に有利な性質を獲得し、同時にGluOCが作用した脂肪細胞に隣接した脂肪細胞は細胞死することが明らかになった。
GluOCは膵臓の膵島β細胞、肝臓、骨格筋、小腸、脳、性腺などさまざまな臓器に作用することが報告されているが、その詳細な分子メカニズムは不明な点が多い。今回発表された脂肪細胞におけるGluOCの影響は、その濃度による効果の違いと分子レベルでのメカニズムの一端を明らかにしたという点で意義があるという。
画像提供:九州大学・福岡歯科大学(冒頭の写真はイメージ)