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飲酒者は危険な薬の飲み方をしている

 AI薬(Alcohol-Interacitve、アルコールと相互作用のある薬)は、作用が予想外に強くなったり、弱くなったり、逆の作用になったりといった危険がある。高血圧や狭心症に使う循環器薬、睡眠薬に使う中枢神経作用薬、感染症に使う抗生剤などだ。例えば、血管を拡張して血圧を下げる薬を服用している時に、飲酒すると、アルコールの持つ血管拡張作用が重なり、予想外に血圧が低下して、立ちくらみを起こして転倒する危険が増す。また、一部の抗生物質は、アルコールの代謝を止めてしまうので、少量の飲酒でも、ひどい二日酔いになる。
 最近、米国の研究者が、米国保険栄養調査に参加した約2万7000人(男女ほぼ同数)を対象にして、アルコールとAI薬の併用状況についての研究結果が公表した。同研究で注目すべきことは、飲酒者と非飲酒者でAI薬の併用率に大きな差がないことである。AI薬の中には、頻繁に処方され、代替が効きにくい薬もあるが、現役医師である筆者の経験では、単独で服用した際の副作用や、処方薬同士の相互作用に比べると、アルコールとの相互作用については、明らかに、患者さんの関心は低いことが、大きな理由になっていると考えている。
 というのも、筆者は、AI薬を処方する際は、必ず告知しているが、「同じ効果で、AI薬ではないものはありますか?」と質問されたことは一度もない。また、服用開始後、効果が十分に出るはずの期間が経過しても、効果が十分に出ない、副作用が強く出ているといった場合、必ず、飲酒の有無だけではなく、飲酒時間と服薬時間が、どれくらいあいているかも詳しく質問する。そうすると、「服薬している期間中は禁酒が必要な薬」なのに、本人は「時間をずらして飲めば大丈夫な薬だと思っていた」と主張することが少なくない。本人は「禁酒しています」と言うが、家族に聞くと、「今まで通り飲酒していますよ」と情報が食い違い、再三指導しても、守られないことも多々ある。
 アルコールとの相互作用で効果が低下していることを見逃して、「この薬は効果がない」と判断されて、処方の種類が変わったために良い治療の機会を逸する、処方量を増やすことで副作用が増加するといった不利益は、結局は患者自身が負うことになる。
 医師も患者も、この問題に関心を持てるよう、実態解明、啓発活動が、今後、進んでいくことを期待したい。