流行語で見る30年と、これからの日本
特集 平成はこんな時代だった
流行語はその年の特徴を表す言葉だ。5月1日、いよいよ新たな元号に移るにあたって、30年続いた平成の特徴を表す事柄を、「ユーキャン新語・流行語大賞」を通して振り返ってみたい。
平成前半
平成最後の2018年の流行語には、性的被害をTwitter(ツイッター)やInstagram(インスタグラム)などのSNSで告白・共有する際に使用されるハッシュタグ「#MeToo(ミートゥー)」が選ばれた。アメリカのハリウッド映画のプロデューサーによるセクハラ疑惑が報じられたことをきっかけに、女優のアリッサ・ミラノさんが同じようなセクハラ被害を受けた女性たちに向けて、”Me too”と声を上げるようTwitterで呼びかけたことで始まった運動。平成最後はセクハラが改めて注目された年だったが、セクハラという言葉自体が広く認識されたのは、奇しくも平成最初の年だった。
「セクシャル・ハラスメント」1989(平成元)年
平成最初の1989年は、「セクシャル・ハラスメント」が流行語に選ばれた。セクハラが注目を集めるきっかけとなったのは、日本初のセクシャル・ハラスメント裁判と言われた「西船橋転落事件」の裁判。この事件は総武線西船橋駅のホームで、酔ってしつこく絡んできた男性を避けようと女性が押し返した結果、男性が転落死したというもの。判決では、男性の行動の裏には女性軽視があると指摘され、女性の正当防衛が認められた。
「バブル経済」1990(平成2)年
1990年には「バブル経済」が流行語に選ばれている。1986年あたりから日本の株価や地価など資産価格が急激に上昇し、好景気が訪れた。高級住宅や高額の宝飾品が売れ、学生は就職先に困らず、ディスコが流行るなど、日本全体が好景気に沸いていたが、1990年に入ると同時に株価が急激に下がり、日本経済が急激に落ち込んだ。急激に膨んで5年ほどで崩壊したことが、泡が膨らんでしぼむ様子と似ていることから、バブル経済と呼ばれ流行語となった。
ちなみに現在の経済動向を見ると、戦後最長の好景気かと言われていたが、3月7日の内閣府の発表では、「景気後退局面に入った可能性がある」とされた。
「インターネット」1995(平成7)年
今や生活には欠かせないものとなっているインターネットも、平成30年の間に流行語に選ばれている。当時加入利用者数4000万人、約150カ国の地域と繋がることができた情報交換システム。コンピューターを繋ぐネットワークの研究を各国が進めていたが、日本でその研究に取り組んでいた慶應義塾大学の村井純教授が受賞した。
今では約40億人と世界の総人口の53%がインターネットに接続しているが、この普及に伴い情報技術分野が大きく進歩し、経済の新たな成長を担い、国家・社会・企業等の組織を変えていく現象に名前が付けられたのは、2000年のことだった。
「IT革命」2000(平成12)年
1990年代後半からパソコンやインターネット、携帯電話などがオフィスや家庭で急激に普及したことで産業構造、行政のあり方から、個人のライフスタイルまで、社会全体が急激に変化することを指す。コンピューターの高性能化、低価格化と通信の大容量化、高速化を二つの柱とし、人々の生活を大きく変えた。一方でハイテク犯罪、プライバシーや個人情報の漏えいなど負の影響もあった。
平成の間に訪れた文化の変化としては、韓流ブームが挙げられる。2017年の紅白歌合戦には、9人組ガールズグループTWICE(トゥワイス)が出演している。韓流ブームの火付け役となった「冬ソナ」は、2004年の流行語大賞にノミネートされた。
「冬ソナ」2004(平成16)年
2002年1月から3月に、韓国KBSテレビで放送された人気ドラマ「冬のソナタ」は、2004年4月からはNHK総合テレビで放映され、最高15%の視聴率を記録した。ドラマの挿入歌は日本語に翻訳され、ドラマの舞台が韓国観光の目的地になった。
平成後半
平成時代の特徴的な社会課題はいくつかあるが、その中でも大きな事柄の一つに、人口減少が挙げられる。2010年までは人口は増え続け1億2806万人にまでなったが、そこをピークに減り始めている。また、この問題と合わせて挙げられるものが「少子化」だ。少子化は1980年代から始まっていたが、出産・子育てにまつわる言葉が2000年代後半から出てきている。2007年には柳澤伯夫厚生労働大臣が「女性は産む機械」と発言したことが大きな問題になり、出産・子育てに関する男女観が浮き彫りになった。
「イクメン」2010(平成22)年
2000年代ごろから、子育てを楽しむ男を、イケメンにかけて「イクメン」と呼ぶようになった。父親を意識した育児用品も増えている。2017年度には男性の育休取得率は過去最高の5.14%になった。しかし、政府が掲げていた2017年までに「育休の男性取得率10%」には至らなかった。
「保育園落ちた日本死ね」2016(平成28)年
2016年に、ブログで「保育園落ちた日本死ね!!!」と題された文章が書き込まれたことをきっかけに、ツイッターでも「#保育園落ちたの私だ」というハッシュタグの投稿が相ついだ。この言葉には、政府が掲げる「待機児童ゼロ」政策が一向に進展しない事態に対して育児中の母親とみられる人物の切実な訴えが現れており、衆議院予算委員会で山尾志桜里議員がこれをとり上げ、保育制度の充実を訴えた署名サイトには短期間で2万8000人の署名が集まった。
これまで平成をいくつかの流行語で振り返ったが、平成だけで終わるテーマはなく過去から未来へと、次の元号の時代にも続けて連なっていく話題が多かった。平成を踏まえて次の新しい時代を迎えることで、今の歴史を生きる私たちがどのように生きていけばよいのか、考えるきっかけにもなるのではないだろうか。
(写真はイメージ)