消費量減少やブランド米ブーム「平成のコメ騒動」
特集 平成はこんな時代だった
米の一人当たりの年間消費量は1962(昭和37)年の118.3kgをピークに、1989(平成元)年には70.4kg、2016(平成28)年には54.4kgまで減少した。平成の間だけでも、一人当たり年間約16kgもコメの消費量が減っている。これを全国の需要量で見ると、毎年およそ8万トンずつ減少していることになる。米の消費量は減少の一途を辿るも、一方で産地それぞれがいわゆる「ブランド米」を次々と世に送り出していた平成の30年間を、「米」の観点から振り返ってみる。
なぜコメの消費量が減ったのか?
米の消費が減った理由としては、健康・ダイエット意識の高まりによって一度に食べる米の量が減っていること、食べ物の選択肢の多様化などで若年層のパン・麺類への依存度が高くなっていることが挙げられる。忙しい生活を送る人たちは食事の時間を削り、朝ごはんを抜く人も増え、パン一つで食事を済ませる人も多く見受けられる。そして、“時短クッキング“のブームもあり、炊くのに時間がかかる米を敬遠する人も多いようだ。
平成の「ブランド米ブーム」
米消費が減っている一方、米の品種改良は地道ながらも確かに前進した。1991(平成3)年に認定された「ひとめぼれ」(宮城県)は、冷害に強いことから東北地方で代表的な品種で、今ではコシヒカリに次ぐ生産量第2位の人気の品種になっている。また、1997(平成9)年に「森のくまさん」(熊本県)、2011(平成23)年に「ゆめぴりか」(北海道)、2015(平成27)年に「青天の
最近では、消費者が気軽に新品種を試せるように、従来の10kg、5kgよりはるかに少ない1kg以下の個包装の商品や、消費者の目を引くようなユニークで意表を突く名前の品種、アニメ風のキャラクターがデザインされたパッケージを使用した米など、生産者の創意工夫を凝らした商品が次々と登場している。
アニメのキャラクターのような女性の絵が描かれたパッケージ「あきたこまち」
今後の米の動向は?
今後も国内の米の消費量は減少していくと予想されるものの、米にとって追い風も吹きつつある。その一つに、2013(平成25)年12月にユネスコ無形文化遺産に「和食」が登録されて以来、海外での和食への注目度が高まっていることが挙げられる。海外における日本食レストランの数は、2006(平成18)年に約2万 4000店だったが、2017(平成29)年には5倍近くとなる約11万 8000店まで増加。また、米の輸出は2011(平成23)年に2129トンだったが、2016(平成28)年にはおよそ5倍の9986トンとなり、順調に増えている。また、国も米の輸出を後押ししており、今後も輸出量は増えていくだろう。また、国内でも、中食・外食産業の需要が今後は増えていく傾向や、少量パッケージでお土産物化するなど、今までとは違った視点での販路の広がりもあるだろう。
日本全体の人口減少による国内需要の減少、農家人口の減少に伴う生産力の低下など、マイナスイメージの付きまとう米だが、訪日外国人の増加、和食への多大な関心と、新しい販売戦略により、米のマーケットにも新しい風が吹くのではないだろうか。
(冒頭の写真はイメージ)