半導体量子コンピュータの実現に道筋 理研、東大など
理化学研究所(理研)は16日、東京大学、スイスのバーゼル大学、ドイツのルール大学との国際共同研究グループによって、半導体を使った量子コンピュータにおいて情報の誤りを高い精度で検出する手法に道筋をつけたと発表した。これにより半導体量子コンピュータの実用化が進むことが期待できる。本研究は、英国の科学雑誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」のオンライン版に15日付で掲載された。
量子コンピュータの情報は不純物や熱などの雑音の影響で容易に失われてしまい、これが量子コンピュータ実現の最大の障害だった。この問題への対処として、量子情報の最小単位である量子ビットに発生したエラーを検出して訂正する量子エラー訂正回路を実装することが必要不可欠と考えられている。これを実現するためには、エラーを検出するための補助量子ビットの読み出しを簡単に行えること、そしてその読み出し行為自体がデータを保持する量子ビットに新たなエラーを生じさせないこと(量子非破壊性)の二つの条件をクリアする必要があった。
電子スピン量子ビットによる量子非破壊測定回路のイメージ図(提供:理研)
研究グループはGaAs/AlGaAs(砒化ガリウム/砒化アルミニウムガリウム)の二種類の化合物を接合した基板に微細加工を施すことで、二つの電子スピンの状態が量子ビット0と1に対応する構造を得て、これを補助量子ビットとして利用した。
量子ビットにマイクロ波を照射して補助量子ビットと量子力学的な相関を持たせた上で補助量子ビットのスピンを測定。これにより量子ビットの状態を直接測定することなく状態を知ることができるようになった。従来の破壊測定による結果と比較して同程度のエラー率で非破壊測定が実現できていることがわかった。測定回数を増やすことで精度を向上させ、エラー率を37%から11%まで減少させることも可能になった。
将来的には磁気雑音を取り除くことでエラー率を大幅に低減できることが見込まれる。本研究の成果は半導体量子コンピュータの実用化に向けた開発を加速させるものと期待できる。
(冒頭の写真はイメージ)