ノートルダム大聖堂火災 問われる教会建築の防火対策
パリの象徴ともいえるノートルダム大聖堂の火災事故で、同様に歴史的な教会建築を持つ欧州各国にも衝撃が走っている。ドイツ公共放送ARDは16日、今回の火災について分析をまじえて報じた。
教会建築の専門家で、かつてケルン大聖堂の建築士も務めたバルバラ・ショック=ヴェルナー氏は、ノートルダム大聖堂の屋根と尖塔部分が焼け落ちるまで、火の回りが速かったことをこう解説する。
「ノートルダム大聖堂の骨組み部分は木材でできており、半分は13世紀からのもの、残りの半分は19世紀からのものです。つまりこれらの木材は非常に古く、また乾燥していました。それが今回の火災が大惨事となった大きな原因です」
ちなみにノートルダム大聖堂に限らず歴史的な教会建造物は、昔のままの木の骨組みでできているものが多いが、ドイツのケルン大聖堂やウィーンのシュテファン大聖堂では今日、鉄製の骨組みが使われているという。
またショック=ヴェルナー氏は、古い教会建築の防火設備がいかに難しいかにも言及。木造建築の場合、今日では木材そのものに防火加工が義務付けられるが、記念碑指定されている歴史的建築物の場合、それは容易ではないという。一方、防火アラームやスプリンクラー装置などに関しては、カトリック教会のミサで焚かれる香煙に反応しやすく、スプリンクラーが発動されれば、建物内部が水浸しになることで受ける損傷が大きいという。
今回の火災で、ノートルダム大聖堂の名高いゴシック様式の祭壇も完全に焼失した。加えて消火活動による損傷も大きく、これ以上風雨による被害が広がらないように、まずは応急処置としての屋根をつけることが急がれている。
ノートルダム大聖堂再建までにどのくらいの時間がかかるのか? ショック=ヴェルナー氏は「少なくとも10年は必要」と見積もっている。
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