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栽培中のシイタケを害虫から守る 新種の寄生バチが害虫駆除で活躍

栽培中のシイタケを害虫から守る 新種の寄生バチが害虫駆除で活躍

シイタケ生産に損害を与える害虫のキノコバエに対し、この幼虫に寄生する新種のハチが害虫防除に有効であることが明らかになった。

森林研究・整備機構 森林研究所(以下、森林総研)は、関東地域の生産者のハウスから菌床シイタケの害虫ナガマドキノコバエ類(以下、キノコバエ)に寄生している新種のハチを発見した。このハチがキノコバエの幼虫に寄生することでキノコバエの数を減らす効果があり、シイタケ生産に影響を与える害虫の防除に有効であることが証明された。この研究成果は3月末にバイオロジカル・コントロール誌にオンライン公開された。

シイタケは栽培きのこ類生産の3割を占める重要な品目で、近年は原木栽培の他に、ハウス内でシイタケ菌を培養した菌床での栽培が増えている。キノコバエの幼虫は菌床やシイタケを食べて増殖するため、一度害虫がハウスに侵入すると、ハウス内に短期間で大発生してしまいシイタケ生産に大きな影響を与える。森林総研では天敵を利用する生物防除技術によってキノコバエを防除できないか模索していたところ、関東地域の生産者の栽培ハウスから採取したキノコバエからハチの成虫が出てくるのを発見した。このハチをハウスに放して検証したところ、キノコバエの幼虫数が激減し、次世代の成虫の数はハチがいないときよりも98%も抑制されることが明らかになった。

今回見つかったハチは、キノコバエの幼虫に産卵し、育つ過程でキノコバエを食べてしまう新種の寄生バチであることが分かった。寄生バチは植物や動物に寄生するハチの仲間で、昆虫の中でも種類が非常に多いことが知られている。害虫の天敵として利用できるものも多いが、サイズが小さく、寄生バチごとに宿主が異なるため、まだ見つかっていない種が多く存在するとされており、分類や生態など分かっていないことが多い。

最近の調査では、今回見つかった寄生バチは関東地域だけでなく、中部地方や九州地方にも分布していることが分かっている。天敵として利用していくためには、周囲の自然環境に生息する寄生バチだけをハウスに呼び込み、寄生バチがハウス内で活躍できる環境を整えることが重要となる。森林総研では、今後は寄生バチの生態や寄生能力を明らかにし、実用的な害虫防除法の開発を目指すとしている。

(写真はイメージ)