椅子を震わせ会議を円滑化 AIがモニタリング
東京都市大学メディア情報学部の市野順子教授らは、会議参加者の意見交換を促すメッセージを、天井照明の点滅と参加者の椅子の振動という2つの方法で送る実験を行った。その結果、参加者の椅子の振動の方が意見交換の活発化に効果があることがわかった。この成果は、4月15日付の情報処理学会論文誌に掲載された。
オフィスワーカーが会議に費やす時間は膨大であり、会議が生産的かつ円滑に進むことが求められている。また会議では、特定の参加者だけが意見を出し続け、控えめな参加者がなかなか発言できないといった状況がしばしば生じる。そこで、将来、知的なコンピュータが会議の場で人間にアドバイスするほどの存在になったとき、どのようにアドバイスを伝えれば会議が円滑に進むかという疑問から、この研究がはじまったという。そして、人間の感覚のうち制御しやすくかつ会議の妨げにならない感覚として、視覚(天井照明の点滅)と触覚(参加者の椅子の振動)に注目した。
実験は、企業に勤めるオフィスワーカーが普段利用する会議室で、業務に沿った議題で行う会議において実施された。参加者の発言の促進や抑制を図るためのメッセージを、天井照明の点滅と参加者の椅子の振動という2つの方法で送った結果を比較したところ、メッセージを送って10秒後に発言者が交替する確率は、照明の点滅で40%、椅子の振動では64%であった。つまり、椅子の振動の方が意見交換(発言者の交替)の活発化に効果あることが定量的に示された。特に、椅子の振動を「発言に消極的な人」に与えるよりも、「発言中の人」や「参加者全員」に与える方が効果があった。
この成果は、参加型会議支援システムへの適用が見込まれるとともに、今後は、人工知能(AI)等を用いて会議の様子をモニタリングし、振動によって円滑に会議を進めながら、多様な意見を引き出すことができる技術の実現を目指すという。
画像提供:東京都市大学